先日の日曜日、ケンが所属するS中野球部の試合を初めて見に行った。
ケン達の先輩である3年生にとっては、最後の大会。負けたらその時点で部活引退という試合である。一つでも多く勝ってすこしでも長くみんなと野球をやっていたいだろう。
3年生と2年生たして13人。ベンチ入りは18人。1年生10人のうち半分は背番号がもらえ、ベンチいりが許される。
体の大きさか、目立ちたがりが功を奏したのか、運良くケンは15番の背番号をつけることができた。(実力が認められたとは、母親のひいき目でみても考えにくい・・)
したがって、ケンはベンチの一員としてコーチャーをやらせてもらっていた。

相手チームとは前に戦ったことがあるそうだが、そのときはノーヒットノーランをやられて完敗したらしい。
そんな相手との戦い、決して楽に点はとらせてもらえないだろう。
まだ梅雨明け宣言はでていないというのに、照りつける太陽は真夏のようだ。
久々にカメラを持ち出した私は、S中ベンチがよく見える、3塁側にむかった。

そして試合がはじまった。
心配をよそに、2回表にS中が先取点をとり、ホームランもありでいけいけの雰囲気。








S中エースの力投で相手チームに得点を許さず、3回を終わって3対0で勝っている。


「よしよし!この調子!」

しかし、その後、どこから流れが変わってしまったのか、S中は三振や凡打が多く得点できず、相手チームは4.5回で3得点。いっきに追いつかれてしまった。
思いの外長い試合でピッチャーも疲れてきたのか、ボールが高めに入るようになり、相手チームの長打が続く。S中ベンチも沈んでいる。ちょっと前まででかい声を出していたケンまでがなんか元気がなくなっている。「ケーン!もっと声出せ~~~!」と叫びたいところだが、そこはSクラブの時とは違い、私も初めて試合見にきたような新参者、あまりでしゃばっては・・とこらえる。


守れ!



守れ!



守れ!!

しかし、流れをなかなかもとに戻せないまま、試合は終盤に近づき、6回の裏一気に5点とられてしまった。
残るは最終回、7回の表、S中の攻撃。

がんばれ!まだまだこれから!!



あきらめるな!



あきらめるな!!



あきらめるな!!!

しかし、ランナーはでたものの、ホームを踏むことなく試合終了。




応援席に「ありがとうございました!」と礼をするときのみんなの表情はやっぱり沈んでいた。3年生の中には涙を流している子もいた。


少年野球Sクラブの試合でも、何度かこういったシーンは経験してきたが、やはりつらい。指導者の方達はもっともっとつらいだろう。この子達に、笑って「ほら、次があるぞ!練習するぞ!」って声をかけることができたらどんなにいいかって、勝って涙を流させてやりたかったって、そんな風に思っているんじゃないだろうか。
ケンもしょんぼりと言っていた。
サードコーチをしていたケンは、ピッチャーの牽制を見抜けず、ランナーに「GO!」と叫んで、アウトいっことられている。(ケン、おまえがひっかかってどうするっ!)
「あのとき、おれがしっかり見てれば・・」
きっと、ケンだけじゃなく、チームの仲間それぞれ後悔があるだろう。
野球をあんまり知らない私がいうのもおこがましいが、野球はひとつひとつのプレイで区切ってみることはできないと思う。ほんと「流れ」がある。「あのときこうだったら・・」って振り返ったら、どこまでいってもきりがないだろう。だけど、そこがまた野球の面白いとこでもある。

この大会、惜しくも一回戦敗退という結果になってしまったが、先輩達の悔しさ、無念さをケンも共有させてもらったこと。試合が終わってからみんなで涙を流せたこと。ケンは本当にいい経験をさせてもらっている。
1.2年のみんなが、同じ思いで先輩を送り出し、同じ思いで「新チームでがんばろう!!」って思うことができたら、きっとS中野球部は強いチームになるだろう。

がんばれ、S中野球部!




(試合後、先輩達が戦ったグランドにトンボがけをするケン達)