「今日は」、いや、「今日も」、ケンが所属する少年野球チームSクラブの試合があった。「今日も」といったが、「今日は」この試合に勝てば県大会出場が決まるというとても大切な試合だ。少し前の大会ではベスト8まで残ったが県大会の夢は叶わなかった。それだけにベスト4まで残った今回の大会で絶対に県大会に行きたい!「あとひとつ」勝てば県大会なのだ。
朝何を着ようかと思って、(SクラブTシャツは昨日きたので、まだ干してある)まず、音楽業界の勝ち組である「桑田」にあやかろうと、「ROCK’N ROLL HERO」Tシャツを着る。鏡で見てみる。おっと、色が黒じゃないか!「黒星」をイメージして縁起が悪い!即、もう一枚の赤の方のサザンのツアーTシャツに着替える。よし!おめでたい!!
朝からなんだか微妙な天気。試合が行われるかどうかはっきりしない。
とりあえず、学校の体育館で練習。そのうち、雨もやんで「試合決行」の連絡がはいった。
お茶当番だった私は、お茶セットを持って体育館に行きしばらくケン達の練習を見ていた。もっと緊張しているかと思ったが、案外みんなのびのびと練習していた。
お昼に家にもどれそうにないので、アヤ、リエのお昼ご飯を調達して家へいったん帰り、そこで私にとっての「勝ちT」であるSクラブTシャツに着替える。そして「勝ちキャップ」である「リップスライム」のキャップをかぶる(リエからもらったライブのおみやげ)
時間になり準決勝、決勝が行われるOグランドへ移動。
前の試合がおわったので、急いで応援席のお茶セットとタープをセッティング。
対戦相手であるGサンボーイズのお母さんがお茶出しの打ち合わせにやってくる。
「先攻後攻で3回最後でいいですか~?はりつけさんも一緒でいいですよね~」(←意味不明の様だが、お茶当番の母達にはわかる)「は~い、わかりました~~。よろしくお願いしま~~す」と、顔はにこやかに、声もかわいらしく、しかし、心の中はメラメラと闘志を燃やし、打ち合わせを終える。「お茶当番が闘志燃やしてもしょうがないやろっ!」と心の中で自分につっこむ。
そして、いよいよ試合がはじまる。
めずらしく(?)ケンがじゃんけんに勝って、後攻をとったので、相手チームの攻撃から。
あれよあれよというまに1点先取される。こちらのピッチャーも調子が悪いわけではない。さすがに打ってくるチームだ。
まだまだ1点。試合は始まったばかり、1点なんてどうってことない。。
しかし、3回の裏になっても1点も返せない・・さすがに焦りがでてきた。子供達も同じ気持ちなのか、ちょこちょことエラーが出始める。ショートの前、マウンドの後ろあたりのグランドがなんだかおかしい。いつものユウタなら、難なくとってファーストへ送球、楽々アウトのパターンなのに、平凡なゴロがものすごくはずむ。ユウタが必死に飛びつくがとどかない。ピッチャーユウキが踏ん張る。
サードゴロ、カケルがとってファーストへ送球。すこしそれる、ファーストのケンがのびてそれを捕ろうとする。ベースから足がはなれる。ファーストセーフ。
なにかが少しずつ狂いはじめている。「来~い!」の声がでなくなる。
梅雨の季節には似合わない太陽がジリジリと照りつける。さっきまで吹いていた風がぴたっとやんですごく蒸し暑い。
そんな事を思っている間にも、相手チームは容赦なく打ってくる。きれいなセンター返しが外野の頭上をこえる。レフト方向にも打球が飛ぶ。ユタカが必死に走る。「バーックホーーム!!」の指示もむなしく、ランナーが次々とホームイン。
4回の表5点という大量得点を許してしまった・・。
ユタカはいつも本当によく声を出している。「ピッチャー楽にー!」「ナイスサードー!」「がっちり守れ~!」「声だせ~!」しかし、いつもどんなピンチでも聞こえていたユタカの声が小さい、そして少なくなっている。みんなの気持ちが沈んでいくのがわかる。
ケン達6年生はほんとうに仲がいい。みんなで野球するのが楽しくて仕方がない感じがする。
お互いの気持ちを思いやる事ができるやさしい子達だ。
それが、良くも悪くもプレイに出る。
誰かが、気持ちのいいヒットを打つ。「うれしい!」
その「うれしい!」がみんなに伝染する。みんながなんだかうれしくなってくる。すごくノリノリになってくる。すると、また他の誰かがヒットを打つ。「うれしい!」そのノリノリは守備にもあらわれる。なんだか動作もスムーズになる。練習でやったとおりにアウトがとれる。
ああ、野球っておもしろい!
そんな状態の時のSクラブは強い!負ける気がしない。
しかし、当然逆もある。
誰かがエラーをする。落ち込む。「またエラーしたらどうしよう・・」「自分のせいでみんなが負けたらどうしよう」
そんな、不安感、自信のなさが伝染する。
前につっこんでフライをとりにいかず、安全策をとって一歩さがってワンバンで捕る。思い切って投げればランナーを刺す事ができるかもしれないのに、一瞬躊躇してしまい間に合わない。焦ってボール球に手をだし打ち上げてしまう。
ほんの一瞬の判断ミス、エラーで、相手に得点をあたえ、自分たちのチャンスをつぶす。どんどん深みにはまる。
ここの所ほとんど毎土日、子供達の試合を見守っている母達には、我が子の元気のなさは手に取るようにわかるだろう。いやーな予感がよぎる。「もうダメなのか?」「やっぱり県大会は無理なのか?」
それでも4回の裏、Sクラブのクリーンナップ、カケル、ユウヤがさすがのバッティングで2点をかえす。
応援席から「この子達は、8点差をひっくりかえした事もあるんだから・・」の声が聞こえる。
よし!あきらめるな!Sクラブ!まだまだチャンスはある!
しかし、5回の表、だめ押しとも思える3点をいれられてしまった。
5回の裏、Sクラブは追加点はとれずゲームセット。

子供達も親たちも落胆の色はかくせない。しかし、すぐに決勝戦がはじまるため、ベンチ応援席をあけわたさなければならない。言葉すくなにかたずける。
この試合に負けた場合、もう一戦別の大会の試合がはいる予定だったが、決勝戦の後表彰式があるという事で延期になり、子供達はそのまま決勝戦を観戦することになった。
私もその場に残っていたが、正直、もう決勝戦などどうでもよかった。もうどっちも県大会にいけるんだからいいじゃ~ん、早く終わってさっさと表彰式して帰ろうよ~と思っていた。
しかし、しかしである、決勝戦は本当によくしまった見応えのあるいい試合だった。2対2のまま、全くの互角で7回が終わり、特別ルールで勝敗を決めることになった。この特別ルールというのは、2アウト満塁からはじめるという「サドンデス」
打順はさっきの試合の続きから。フォアボールでも、デッドボールでもおしだしで一点がはいってしまう。攻める方も守る方も、そして見てる方も本当に手に汗握る。さっきまで遊んでいたSクラブのメンバーもネットに張り付いて真剣にみている。投げる、打つ、守る。三振も、フライも、ゴロもある。どちらかの誰かがミスをしたら負けという、すごい緊張が走る。両チームともすごい集中力。
Sクラブの子供達の口からも「がんばれー」の声が自然に出てくる。
そんな戦いが4回も続き、5回めのサドンデス、最後はデッドボールで決まった。
「ふ~っ・・」というため息のあと、ものすごい拍手がおこった。どちらも勝たせてやりたい。本当にそんな戦いだった。
自分たちが負けた相手の戦いっぷりを見て、ケン達はどう思ったんだろう?
私は、なんだかすっきりした。完全に実力の差だと思った。残念ながら今のSクラブには、あれだけのチカラは無いんだと納得出来た。
1試合目はサード、2試合目にピッチャーで、2試合連続で戦い、おまけに5回にわたる息詰まるサドンデスに投げ勝ったGサンボーイズのキャプテン。その気迫はほんとうに感動ものだった。
同じキャプテンとして、今のケンに足りない物、それは、その「気迫」とたくさんの練習、試合の積み重ねからくる「自信」だと思う。
ケンがはたしてそんな風に感じてくれたかどうかはわからない。「そんな簡単に言わんといてよ~」と言うかもしれない。
これから、まだ次々と大会がある。一つ一つの試合を、練習を大事にして欲しい。
いっぱい練習して、いっぱい自信もつけて、そして、今日負けたGサンボーイズと再び戦う時がきたら、その時は、Sクラブのみんなの、のびのびとした元気いっぱいの戦いっぷりが見たい。
これからまだまだたくさんの大会が始まる。どんどん勝ち抜いて、今度こそ「あとひとつ」を絶対勝ち取ろう!
がんばれ!Sクラブ!!がんばれ!!ケン!!!

※私はこうやってたまに、野球の様子をからめたブログをUPしますが、はっきりいって、野球の事はあんまり知りません。テレビの野球中継やケン達の試合、そして「ドカベン」「野球狂の詩」なんかのマンガで得た知識しかありません。機会があれば、ケンのチームの監督コーチにあれこれ聞いて教えてもらっていますが、まだまだルールでさえよくわかっていません。
そして、試合の様子も自分のうろ覚えの記憶で書いてます。
なんで、大筋は大丈夫でしょうが、細かい部分は間違っているところもあるかもしれません。このブログを読んで下さっている皆さん、その辺なにとぞご容赦願います!
朝何を着ようかと思って、(SクラブTシャツは昨日きたので、まだ干してある)まず、音楽業界の勝ち組である「桑田」にあやかろうと、「ROCK’N ROLL HERO」Tシャツを着る。鏡で見てみる。おっと、色が黒じゃないか!「黒星」をイメージして縁起が悪い!即、もう一枚の赤の方のサザンのツアーTシャツに着替える。よし!おめでたい!!
朝からなんだか微妙な天気。試合が行われるかどうかはっきりしない。
とりあえず、学校の体育館で練習。そのうち、雨もやんで「試合決行」の連絡がはいった。
お茶当番だった私は、お茶セットを持って体育館に行きしばらくケン達の練習を見ていた。もっと緊張しているかと思ったが、案外みんなのびのびと練習していた。
お昼に家にもどれそうにないので、アヤ、リエのお昼ご飯を調達して家へいったん帰り、そこで私にとっての「勝ちT」であるSクラブTシャツに着替える。そして「勝ちキャップ」である「リップスライム」のキャップをかぶる(リエからもらったライブのおみやげ)
時間になり準決勝、決勝が行われるOグランドへ移動。
前の試合がおわったので、急いで応援席のお茶セットとタープをセッティング。
対戦相手であるGサンボーイズのお母さんがお茶出しの打ち合わせにやってくる。
「先攻後攻で3回最後でいいですか~?はりつけさんも一緒でいいですよね~」(←意味不明の様だが、お茶当番の母達にはわかる)「は~い、わかりました~~。よろしくお願いしま~~す」と、顔はにこやかに、声もかわいらしく、しかし、心の中はメラメラと闘志を燃やし、打ち合わせを終える。「お茶当番が闘志燃やしてもしょうがないやろっ!」と心の中で自分につっこむ。
そして、いよいよ試合がはじまる。
めずらしく(?)ケンがじゃんけんに勝って、後攻をとったので、相手チームの攻撃から。
あれよあれよというまに1点先取される。こちらのピッチャーも調子が悪いわけではない。さすがに打ってくるチームだ。
まだまだ1点。試合は始まったばかり、1点なんてどうってことない。。
しかし、3回の裏になっても1点も返せない・・さすがに焦りがでてきた。子供達も同じ気持ちなのか、ちょこちょことエラーが出始める。ショートの前、マウンドの後ろあたりのグランドがなんだかおかしい。いつものユウタなら、難なくとってファーストへ送球、楽々アウトのパターンなのに、平凡なゴロがものすごくはずむ。ユウタが必死に飛びつくがとどかない。ピッチャーユウキが踏ん張る。
サードゴロ、カケルがとってファーストへ送球。すこしそれる、ファーストのケンがのびてそれを捕ろうとする。ベースから足がはなれる。ファーストセーフ。
なにかが少しずつ狂いはじめている。「来~い!」の声がでなくなる。
梅雨の季節には似合わない太陽がジリジリと照りつける。さっきまで吹いていた風がぴたっとやんですごく蒸し暑い。
そんな事を思っている間にも、相手チームは容赦なく打ってくる。きれいなセンター返しが外野の頭上をこえる。レフト方向にも打球が飛ぶ。ユタカが必死に走る。「バーックホーーム!!」の指示もむなしく、ランナーが次々とホームイン。
4回の表5点という大量得点を許してしまった・・。
ユタカはいつも本当によく声を出している。「ピッチャー楽にー!」「ナイスサードー!」「がっちり守れ~!」「声だせ~!」しかし、いつもどんなピンチでも聞こえていたユタカの声が小さい、そして少なくなっている。みんなの気持ちが沈んでいくのがわかる。
ケン達6年生はほんとうに仲がいい。みんなで野球するのが楽しくて仕方がない感じがする。
お互いの気持ちを思いやる事ができるやさしい子達だ。
それが、良くも悪くもプレイに出る。
誰かが、気持ちのいいヒットを打つ。「うれしい!」
その「うれしい!」がみんなに伝染する。みんながなんだかうれしくなってくる。すごくノリノリになってくる。すると、また他の誰かがヒットを打つ。「うれしい!」そのノリノリは守備にもあらわれる。なんだか動作もスムーズになる。練習でやったとおりにアウトがとれる。
ああ、野球っておもしろい!
そんな状態の時のSクラブは強い!負ける気がしない。
しかし、当然逆もある。
誰かがエラーをする。落ち込む。「またエラーしたらどうしよう・・」「自分のせいでみんなが負けたらどうしよう」
そんな、不安感、自信のなさが伝染する。
前につっこんでフライをとりにいかず、安全策をとって一歩さがってワンバンで捕る。思い切って投げればランナーを刺す事ができるかもしれないのに、一瞬躊躇してしまい間に合わない。焦ってボール球に手をだし打ち上げてしまう。
ほんの一瞬の判断ミス、エラーで、相手に得点をあたえ、自分たちのチャンスをつぶす。どんどん深みにはまる。
ここの所ほとんど毎土日、子供達の試合を見守っている母達には、我が子の元気のなさは手に取るようにわかるだろう。いやーな予感がよぎる。「もうダメなのか?」「やっぱり県大会は無理なのか?」
それでも4回の裏、Sクラブのクリーンナップ、カケル、ユウヤがさすがのバッティングで2点をかえす。
応援席から「この子達は、8点差をひっくりかえした事もあるんだから・・」の声が聞こえる。
よし!あきらめるな!Sクラブ!まだまだチャンスはある!
しかし、5回の表、だめ押しとも思える3点をいれられてしまった。
5回の裏、Sクラブは追加点はとれずゲームセット。

子供達も親たちも落胆の色はかくせない。しかし、すぐに決勝戦がはじまるため、ベンチ応援席をあけわたさなければならない。言葉すくなにかたずける。
この試合に負けた場合、もう一戦別の大会の試合がはいる予定だったが、決勝戦の後表彰式があるという事で延期になり、子供達はそのまま決勝戦を観戦することになった。
私もその場に残っていたが、正直、もう決勝戦などどうでもよかった。もうどっちも県大会にいけるんだからいいじゃ~ん、早く終わってさっさと表彰式して帰ろうよ~と思っていた。
しかし、しかしである、決勝戦は本当によくしまった見応えのあるいい試合だった。2対2のまま、全くの互角で7回が終わり、特別ルールで勝敗を決めることになった。この特別ルールというのは、2アウト満塁からはじめるという「サドンデス」
打順はさっきの試合の続きから。フォアボールでも、デッドボールでもおしだしで一点がはいってしまう。攻める方も守る方も、そして見てる方も本当に手に汗握る。さっきまで遊んでいたSクラブのメンバーもネットに張り付いて真剣にみている。投げる、打つ、守る。三振も、フライも、ゴロもある。どちらかの誰かがミスをしたら負けという、すごい緊張が走る。両チームともすごい集中力。
Sクラブの子供達の口からも「がんばれー」の声が自然に出てくる。
そんな戦いが4回も続き、5回めのサドンデス、最後はデッドボールで決まった。
「ふ~っ・・」というため息のあと、ものすごい拍手がおこった。どちらも勝たせてやりたい。本当にそんな戦いだった。
自分たちが負けた相手の戦いっぷりを見て、ケン達はどう思ったんだろう?
私は、なんだかすっきりした。完全に実力の差だと思った。残念ながら今のSクラブには、あれだけのチカラは無いんだと納得出来た。
1試合目はサード、2試合目にピッチャーで、2試合連続で戦い、おまけに5回にわたる息詰まるサドンデスに投げ勝ったGサンボーイズのキャプテン。その気迫はほんとうに感動ものだった。
同じキャプテンとして、今のケンに足りない物、それは、その「気迫」とたくさんの練習、試合の積み重ねからくる「自信」だと思う。
ケンがはたしてそんな風に感じてくれたかどうかはわからない。「そんな簡単に言わんといてよ~」と言うかもしれない。
これから、まだ次々と大会がある。一つ一つの試合を、練習を大事にして欲しい。
いっぱい練習して、いっぱい自信もつけて、そして、今日負けたGサンボーイズと再び戦う時がきたら、その時は、Sクラブのみんなの、のびのびとした元気いっぱいの戦いっぷりが見たい。
これからまだまだたくさんの大会が始まる。どんどん勝ち抜いて、今度こそ「あとひとつ」を絶対勝ち取ろう!
がんばれ!Sクラブ!!がんばれ!!ケン!!!

※私はこうやってたまに、野球の様子をからめたブログをUPしますが、はっきりいって、野球の事はあんまり知りません。テレビの野球中継やケン達の試合、そして「ドカベン」「野球狂の詩」なんかのマンガで得た知識しかありません。機会があれば、ケンのチームの監督コーチにあれこれ聞いて教えてもらっていますが、まだまだルールでさえよくわかっていません。
そして、試合の様子も自分のうろ覚えの記憶で書いてます。
なんで、大筋は大丈夫でしょうが、細かい部分は間違っているところもあるかもしれません。このブログを読んで下さっている皆さん、その辺なにとぞご容赦願います!