1月8日、ケンの所属する少年野球チームの卒団式が行われた。私達5年母が中心になって、去年の秋頃から計画をたて準備してきた式である。
私の担当は「卒団記念品」。前年までは集合写真がプリントされたペナントだったらしい。今年も例年通りという意見もあったが、ここのところSクラブの少年達を写真におさめてきた私としては、それをなんとか形にしたいと思い「卒団アルバム」はどうかと意見をだした。他のお母さん達も賛成してくれて、編集作業をはじめた。
写真は山ほどある。その中から何枚か選んで構成を考えればいい。そんな風に安易に考えて、卒団生一人一人の写真をパソコンで出して見てみる。すると、ほんの4月5月頃に撮った写真でさえもう使えない。そのころの表情、体格全て幼すぎて、今の子供達と全然違うのである。たった半年の間にこんなにも成長するものなのか・・・そんな事にいちいち感心している間にどんどん日にちはたっていく。とにかく試合のたびにカメラを持って出掛けていって、6年生中心に写真をとりまくった。どんなスポーツを撮ってもそうなんだろうけど、「ヒットの瞬間」「ファインプレイの瞬間」なんてものは狙ったってとれるもんじゃない。とにかくシャターを切りまくる。デジタルの一眼レフじゃなきゃフィルム代もったいなくて絶対こんな事はできないだろう。一試合200~300枚くらいは撮っただろうか。撮った写真をパソコンで見てみる。「これはいい!」って思うのはほんのわずか。そのわずかの写真の中からさらに何枚か選んで構成を考える。毎日毎日写真とにらめっこ。
こんな頃には6年生の子供達が、私にとってはほんとうにかっこいい、「スーパースター」になっている。一つ一つの表情がかっこいい。動きがかっこいい。必死に走る姿がかっこいい。くやしそうな表情がかっこいい。ヒットをうったときのうれしそうな顔がかっこいい。そんな写真ばっかり見ているんだからしょうがない。
写真に写った表情は、ほんの一瞬を切り取ったものであるが、普通に試合を見てても、ビデオに撮ってあとからみても、絶対に見る事のできない物があると思う。そこには本当にうそのないその子だけにしかできないキラキラとした表情がある。
そんな表情を集めて、その子供達が主役のアルバムを作りたいと思った。

編集の段階で、絶対いれたかったのは、いつもSクラブが練習している校庭の写真。毎週毎週ここに集まって、練習して、試合に勝っても負けてもここに帰ってくる。Sクラブのホームグランドである。何年かたって見たらきっと懐かしいだろう。
しかしこれがなかなかいい物がない。やっと一枚、ショウちゃんが撮っておいてくれた写真を見つけた。構図はすごく気に入ったのだが、青空でもない、雨降りでもない、なんかぼんやりとした空が写っている。どうしようかと思ったがあらためて校庭を撮りに行く時間もない。しかたなく上に何か文章をのせてカバーしようと思った。「文章っていってもなー」ぼーっと写真を見つめていたら、ある言葉がうかんだ

「僕らはこの校庭で出会った」

その後は、信じられないくらいすいすいと言葉が出てきた。子供達がどろどろになりながら球を追いかけている姿、叱られて泣いている姿、試合に負けて悔し涙を流している姿。監督コーチがノックをする姿。キャッチボールをする姿。試合のあと子供達に言葉をかけてやる姿。それらがわ~っと頭の中に浮かんできて言葉になってでてきた感じ。
ほんとうに簡単な言葉だけでつづられたその詩は、Sクラブの子供達、監督、コーチ、お母さん達には、きっと何かを感じてもらえる。そんな気がしてきて、その詩をのせる事にした。

あとは、5人の卒団生の写真を構成して、今までがんばって戦ってきた試合結果をどんな風にのせるか考えて・・
ところが、ここからもはかどらない。たしか、こんな写真があったんじゃないかとか、あのときのホームラン確か撮ってたよなーとか、あれもこれもいれたくなって全然まとまらないのだ。しかし、一人のスペースはA4二枚分、数は限られてくる。どうしても一枚目は大きい写真が載せたかった。とにかくこの子達のこの表情を見て!って思った。そうすると、残り1枚。のせられる枚数は少なくなってしまう。6年生一人だけでも写真集ができるぞ!ってくらいの勢いの私には、なかなかつらい作業だった。
そんなこんなでもがきつつも5人分のページ完成。
その次は監督、コーチのページ。これは試合の時、こそこそと反対側のベンチにいったりして撮ってたのがあったので、あんがいスムーズにいった。しかし、いつもひかえめだが、熱心に、そしてやさしく子供達を指導してくれていたUコーチの写真がない。いや、あるにはあるのだが、撮ったのが寒い時期で、深く帽子をかぶっていたり、フードをかぶっていたりして、顔がよく写っていない。でもどうしてもアルバムにのせたい!そんなわけで、ショウちゃんと、Oコーチに協力してもらって、Uコーチの家までおしかけて行って写真を撮らせてもらった。
これで監督コーチのページ完成。

集合写真は、ドリーム杯で優勝した時のものにした。この大会は、卒団前にもう一つ優勝旗を手にできるかどうかの最後のチャンスの大会だったので、みんなそうとう気合いがはいっていた大会だ。優勝出来た時の6年生はほんとうにうれしそうで、シャッターをきるのもすごく楽しい写真だった。

そして最後にどんな写真をもってくるか。これは、以外にもかなり前から決まっていた。
夕焼けをバックに子供達がトンボかけをしている写真。
ケン達のチームが参加する大会のほとんどは、勝ったチームが最後にトンボかけをするという慣習がある。トンボをかけるってのは、勝者の特権である。それでこの写真を見て、がんばってがんばって勝ったときのうれしさを思いだして欲しかった。そしてもう一つは、SクラブキャプテンW君のトンボかけが印象に残っているから。W君はいつもとにかく率先してトンボがけをしている。それはていねいにきれいにやっている。「背番号10」がトンボがけをしている場面は、私の「少年野球」に対するイメージとみごとにマッチして、夕焼けのトンボかけの写真がとれたとき、コレだ!って思えたのかもしれない。


年末も近づいて、そうとう焦ってきた頃、最後の問題は製本である。
もともとコーチの一人Hさんが印刷会社に勤めているということで、お願い
しようということになっていた。しかし例年にない大雪で、ことごとく試合練習がつぶれ、思うように写真が撮れず、中身の印刷がそうとうおそくなってしまった。
もう絶対無理だと思って手作りで製本することも考えていた。しかし、そのコーチが「なんとかやってみるから」と言ってくれて、やはりお願いすることに。
大晦日の日に、アルバムの中身をHコーチの家に届け、忙しい年始に製本をしてもらって、それをHコーチが会社帰りに届けてくれたのが、なんと卒団式の前日の夕方5時すぎ!
ほんとぎりぎりセーフでした。(Hコーチほんとうにありがとうございました)

こんな風に、どたばたで出来たアルバム。でも私にとってはかけがえのない愛しい1冊になった。
みんなはどんな風に見てくれたんだろう。もっと大きくなってからも時々見て、Sクラブで頑張った時を思い出してくれるかなー。何度も何度も見てくれるかなー。

今回こんな風に私がアルバムを完成させる事ができたのは、5年生のお母さん達が、これ以外の細々とした事、買い出しや、注文、時間の調整、などなど、一手にひきうけてくれたから。そして年末年始の忙しい時期に製本に協力してくれたHコーチ。たくさんの写真を提供してもらったt_ojisan
いろいろ相談にのってくれたり、私がでかけられない時に写真を撮ってくれたショウちゃん。感謝してます!そしてなによりも、一生懸命野球をやって、生き生きとした写真を撮らせてくれた子供達、ありがとう!!