昨日、リエの通う中学校に三者懇談に出かけた。
リエの中学校は最近新校舎に建て替えたばかりで、なにもかも新しくてきれいだった。真っ白な壁、全てバリアフリー、エレベーターやエアコンまでついている。(これはそう簡単には使わせてもらえないようだが・・)
廊下には各教室の前にベンチコーナーの様な場所があって、立ち話をしても通行の妨げにならないようになっている。
そのベンチコーナーでふと窓の外をみると、手の届きそうな所に旧校舎が見えた。
窓は割られ、壁も床も掘り起こされ、なんとも無惨な姿をさらしていた。校舎の端の方では大きなブルドーザーがどんどんと壁を切り崩していた。

アヤとリエがこの中学校に入学した時を思い出した。
体育館で入学式を終えた後、真新しい制服とは対照的なこの古い教室で、新しいクラスメート、新しい先生と出逢い、そして初めての生徒手帳をもらってみんなうれしそうだった。黒板には先輩からの「入学おめでとう」のにぎやかなメッセージが書かれてあった気がする。
4月の明るいさわやかな光に照らされ、教室中がキラキラと光って見えた。

ところが今目の前にあるこの光景はどうだろう。
教室にあるべき机も椅子もなく、当然生徒もいない。かわりにコンクリートのがれきがそこにはある。
「パーン、パーン」と窓ガラスを割る音が、悲鳴のように聞こえる。

そういえば、アヤが「毎日通学電車の中からどんどんこわされていく校舎を見ていると、泣けてきそうになる」と言っていた。

私はこの中学校に通っていたわけではないが、それでもなんだかとても切なくなってしまった。

小学校も中学校も高校も、その思い出は、校舎とともに、教室とともにあると思う。そりゃーそうだ、一日の大半をそこで過ごしているんだから。
そんな思い出一杯の校舎が少しずつ姿を消そうとしている。新しい校舎に「よろしく頼む」と子ども達を引き渡し、「ありがとう。さようなら」と言っているようだ。

最初は、授業中も隣で工事をしているなんて、うるさいだろうし、子ども達かわいそうにと思っていた。しかし、この光景を見て、そんな思いはすっかり消えていた。
この旧校舎の解体の様子を見た生徒達は、授業では学ぶ事の出来ない何かをきっと感じているだろう。(絶対感じてほしい!)

新校舎に目を戻す。
まだなじみの薄い新校舎。でもこれから、この校舎がこの教室がみんなを見守ってくれる。みんなの思い出の一部になる。
そんな気持ちで、新しい校舎を大事にしてほしい。

はっと現実にもどる。
そういえば、これから三者懇談だった・・

三者懇談で学校に来たんだけど、旧校舎にお別れができてよかった。
今までご苦労様。ほんとうにありがとうございました。