ケンがケガをした事は「大失敗」にも出てるが、そろそろ2週間が経とうとしている。痛みもほとんど無くなり、今度の土曜日の「Nスポーツクリニック」の診断でOKが出れば、Sクラブに本格復帰出来るかもと考えている。
この「Nスポーツクリニック」というのは、「動かしながら治す」という治療方法をとりいれているようで、ギブスで固定することをせず、必要なときはテーピングで保護しながら少しずつでも動かしていこうという指導だった。1週間弱の装着で、すでにギブスがうっとおしくて仕方がなかったケンは「テーピング」といういかにもプロ野球選手とかがやってそうな技を施され、ちょっとうれしそうだ。
このクリニックはやはり人気があるようで、どんどんと患者さんが入ってくる。しかも、やはり何かしらスポーツをやってそうな、ジャージー姿の体格のいい人が多い気がする。診察が終わって「リハビリ室」に向かうと、そこはもう完全にスポーツジム状態。さまざまなフィットネスマシンに向かっていろいろな人がいろいろな運動をしている。私もケンもめずらしくてきょろきょろしてしまった。そこで足首の筋肉を徐々にほぐすリハビリ運動を指導してもらい、支払いをすませて帰った。
ランニングとキャッチボールはやってもいいという事だったので、ケンは「練習にでたい」と言っていたが、MLがきて「雨のため練習中止」、仕方なしに家でキャッチボールをしていた。

Sクラブの試合はここの所本当に見応えのある試合が多い。県大会がかかった試合ももちろんだが、他の大会の試合もどきどきハラハラの展開が多い。
ケンが出ていないにもかかわらず、見ていてすごく力がはいる。緊張する。声がでる。
どの試合も、決して楽に勝てる相手ではない。
少し前までのSクラブは自他共に認める強いチームだった。すばらしい野球センスの持ち主が多かった。しかし、そのメンバーのうちの何人かがやめてしまった。したがって、ケンの様に野球経験も少なくまだまだ実力のない者まで、スタメンに名をつらねる状況にあるわけである。他のチームならきっとベンチにもいれてもらえないだろう。ぎりぎりのメンバーでやっているので、6年生の主力になっている子達はケガをしても、それを押して出なくてはチームが成り立たない。
そんな、ぼろぼろのSクラブがあと一つ勝てば県大会に出られる。
ここまできたのだってすごいと思う。監督コーチ陣の指導采配によるものが大きいと思う。
ここまできたからこそ、県大会に出させてやりたい。
私達は見ているだけしか出来ない。監督コーチ、そして何よりもメンバーの「勝ちたい」という思いに望みをたくすしかない。

ケンが野球を始めたときは「土日家でごろごろして、ゲームやマンガで終わるよりいいだろう」くらいの気持ちだった。しかしそれだけではなかった。
親が教えようとしても教える事のできない物を学んでいる。
「うれしさ」「くやしさ」「逃げ場のないつらさ」「チームメイトを思いやる心」「練習の成果のあらわれた時の達成感」
これらの経験は、きっとケンの宝物になるだろう。

「お母さんあと10分だけゲームやっていい?」
「コロコロ買ってきてくれた~?」
「今日宿題めっちゃ多いで、遊んだあとでやっていかん?」
「ねえ~、プロ野球チップス買って~」
「やり~!立浪のカードゲット~!!」
これがいつものケンである。ごくごく当たり前の小学生。

こんな子達ががんばっている。
必死に戦っている。
そんな試合なんだから感動するのは当たり前だ。
ちから一杯応援し、家では明るくフォローしてやりたい。

がんばれSクラブ!