「リエはどう思う?」
私は、友達や家族のこんな質問に、いつも考え込んでしまう。話をつなげなくてはと急いで答えると、自分の思っていることの十分の一も言えない。自分の気持ちを人に伝えることとは、なぜこんなにも難しいのだろう。
 
私が最初にこのことを思ったのは、小学校四年生のときだ。家族で楽しく晩ご飯を食べているときだった。自分も楽しいんだということを上手に伝えられなくて、
「あんたっていつも冷めとるよね。」
と言われてしまった。悲しかった。私がもっと上手く気持ちを伝えられたら・・・。
 
私が一番困ったことは、メールだ。メールは、遠く離れた友達とでも気軽に連絡がとれる、とても便利なものだ。私も携帯電話を買ってもらったときは、とてもうれしかった。しかし、友達とメールのやりとりをしているうちに、自分が、メールが苦手なことがわかってきた。メールでは、顔の見えない相手に文字で気持ちを伝えなくてはならないからだ。友達から送られてくるメールに返信を一回するだけでも、すごく時間がかかってしまう。そんな自分に腹が立ってしまうことだってある。

 そんな話を聞いて、自分の気持ちなんか、素直に表現すればいいだろうと思う人もいるだろう。しかし私にとって「素直に表現する」ということは、とても難しいことなのだ。「素直」ということは、どういうことなのだろう。正直に自分の気持ちを言うことなのだろうか。では、言葉に表せない気持ちを表現したいときはどうすればいいのだろう。人間の感情は言葉にできないものの方が多いのではないだろうか。・・・・考え出したらきりがないのだ。もしかしたら、私はこれからずっと自分の気持ちを表現できないもどかしさを抱いていかなければならないのかもしれない・・・。

 そんな不安からぬけだす第一歩の手助けをしてくれたのが、あるミュージシャンの言葉だった。彼の書く歌詞は、直接的な表現がなくても、それを見ただけで、その曲の感情が伝わってくる。いつも感動させられる。そんな彼があるテレビ番組で、
「僕は、限りなく一般人に近いです。何か特別な出来事にもあってないし、何かに不自由したこともありません。なので歌詞を書く時は、身近な表現を大切にします。」
と言っていた。私はその言葉を聞いて、はっとした。たしかに彼の歌詞は、私も普段使う言葉を使ったものが多いのだ。では、なぜ彼と同じ言葉を使っているのに、私は感情を伝えるのが下手なんだろう。その後も話を聞いていると、彼は曲調に合った言葉を使うのはもちろん、詩の細部にまでこだわっているらしいのだ。例えば、同じような意味をもった言葉を並べてみて、どの言葉が一番良いのかを十分に考えて選ぶのだ。さらに彼は、。その言葉が漢字がよいのか、ひらがなが良いのかというところまで考えるのだという。なるほど。細部にまでこだわれば、私の気持ちももっと楽に伝わるかも知れない。

 私は、人より表現することを難しく考えすぎているかもしれない。しかし考える事で、今よりも正確に気持ちが伝わるのであれば、私はこれからも表現について考えていこうと思う。今書いているこの文章も、まだ自分の気持ちを表現しきれてないところもある。でも、将来もう一度同じような文を書いたら今よりももっと気持ちが伝わるだろう。だから、その時はもう一度私に質問して欲しい。
きっと胸をはって気持ちを伝えられるから。

「リエはどう思う?」