日常の発掘調査現場では、いやでも写真を撮らないといけない立場にありますが、これがなかなか難しいのです。写真は、現場・遺跡の命です。それはやがて消えてしまうからで、遺構もまわりの自然環境もなくなってしまいます。遺跡も周辺の自然環境と一体となっているのです。
私が絶対におさえなくてはいけないと考えているポイントの1つは、遺跡の全景写真です。
全景写真とは、基本的に遺跡の最もよい状態で撮られるべきものです。基本的に遺構は完掘した状態ですが、古墳などの例外もあります。また、その遺跡を最も端的にあらわし、見る人の心に迫るものでなければなりません。かつ、周辺の自然環境や遺跡の立地する場所がわかり、風景がわかるものです。調査区だけ映っていてもおもしろくありまへん。空や背景の景色もいれるとよいです。ランドマークとなりうる雲もあれば、山もあり、市街地だったら建物や電車など、いろいろあるでしょう。季節感も出ます。時代背景もわかります。だいたい遺構をはさんで上を6、下で4の比率で余白をとり、背景をいれます。この6:4が最もバランスがよく、見た人に安心感を与えます。カラーが基本で、モノクロはオプションです。それぞれの遺跡のロケーションには、構図と被写体が絶妙に合致するスポットがあるはずです。そうした撮影ポイントも最初から意識して検討しなくてはなりません。
私は全景写真では4×5カメラでタテ位置で写真をとります。なぜかというと、報告書のA4の版では、6×7のタテ位置写真を使って、タテの1枚図版を組んだとしても、どうしても原版が小さく、仕上がり写真の粒子が粗くなってしまうからです。そうです、4×5ならば、タテ1枚図版でも粒子の細かさを保つことができ、鮮明な仕上がりになります。つまり、4×5でヨコ位置を撮る必要はありません。6×7のヨコ位置で間に合うからです。そもそも、ヨコ位置では、A4図版では上下2段組が精一杯の大きさです。これが6×7の宿命です。
もちろん決して清掃には手をぬきません。全体を時間をかけて清掃するのです。ほうきは論外です。地面に線が残ってしまいます。撮影前日に行って、次の日の朝に撮る場合もあります。土のう、シート、道具類は一切写真に入らないように移動させて片付けます。アングルによっては、足場も必要でしょう。2段~3段立てるパターンが多いです。
撮影時間は場所によって太陽と影の関係がありますが、基本は晴れの日の朝です。これに限ります。もしくは午前中です。午後はせいぜい昼過ぎぐらいまでです。朝の光が1日のなかで最も柔らかい光なのです。また、南から撮れるのは朝だけです。朝をすぎたら影がはいります。南からの撮影は難しいのです。
いままでいろいろと書きましたがほんの序の口です。全景写真をおさえるには以上のことに注意関心がなければ、撮ることはできません。現場が始まる前から勝負は始まっているのです。つまり、恐ろしいことに、写真をみればその調査の精度、レベルがわかってしまうのです。
悲しいことに、佐賀県内で、こうしたことを考えて撮影している人を私は知りません。ふだんは、なかなか説明しようとしてもバカの壁が高いので、誰にも教えてあげませんよ~だ。
ちょっとした小話でした。

