イトオシイ | とっさんの幸せ。

イトオシイ

 


 『ソウジャナイ………』



頭の中で何度も流れる。 

でも、私にはその言葉の意味するところが 理解できずに 疑問符で一杯だった 


私の疑問の表情が 彼にも伝わったのだろう 


少し間をおいて 
  彼はもう一度言った。



『別れたいワケじゃない』




頭の中で新しい言葉が回りはじめた 






………どういう事? 





頭の中で考えても仕方ないと自分で思い、言葉にしてみる 


『連絡なかった事と、私への気持ちは関係ないって事?それは別れなくていいってとっていいの?』



『………うん』




『まだ私の事好きでいてくれてる?』




しつこいとは思いながらも、自分への気持ちを確かめずにいられなかった



『…うん。』






正直、別れの瞬間だと思っていた自分は予想外の返事に戸惑った 



 
『ちょとだけでいいから、抱きついてもいい?』



こんな事をなぜか言っていた 



そして、



彼の返事を聞く前だったけど、 

それまでポケットに入れていた両手を彼が出したのが見えたから、ゆっくりと近づいて 私は彼に抱きついた。




 


好きでまらなくてしていた抱擁とは違う…… 




抱きしめるというより、

今、彼がここにいるという事実、その存在を確かめたかった……… 



彼に抱きつきながら

涙こそ出なかったが、鼻の奥がつんとする感じが広がっていく…… 



ただただ彼の存在が イトオシクてたまらなかった 




それ以上考えられなかった 

こんなに誰かをイトオシイと思えたのは 

本当に初めてだった