第2期トランプ政権が発足して、3ヶ月が過ぎました。
その100日間を振り返ってみましょう。
ガザ戦争の停戦。
ウクライナ戦争の停戦交渉の進展。
米国の関税増税に対する報復関税合戦と株価の乱高下、などなど。
Good newsとBad newsが錯綜する、ジェット・コースターのような世界情勢の変動が続いています。
この状況を作り出した中心人物、ドナルド・トランプ大統領とは、一体どんな人物で、何を目指しているのでしょうか。
猫の大学者、クロ先生に分かり易く解説していただきました。
クロ
テレビのニュースショーでは、ゲストの学者先生が、トランプ大統領について色々解説しておる。
だが、枝葉末節な論議ばかりで、トランプ大統領の本質については、何にも分かっておらん。
何を考えて、何を言っているか、分かり難い石破首相と違って、トランプ大統領の言動は、非常に分かり易い。
根は単純な男なんじゃ。
トランプは、大統領になって実行したいことを明瞭に発言しておる。
皆も知っている、彼の大統領選挙のスローガン。
一期目の選挙(2016年)も、二期目の選挙(2024年)も同一じゃ。
"Make America Great Again" 略して、”MAGA" ガマではない。
「アメリカを再び偉大にしよう」 日本語訳
これが、トランプの目的じゃ。
そして、残念なことに一期目(2016~2020年)には、ほとんど成果を挙げることができなかった。
だから、あんなに焦ってバタバタしているんだなー。
さて、彼が考える偉大なアメリカは、どんなアメリカか。
分かるかな。
そのヒントも、彼のスローガン”MAGA"にある。
実はトランプのスローガンは、オリジナルではない。
パクリなのじゃ。
オリジナルは、ロナルド・レーガン大統領(1980ー1988)が、大統領選で使ったものだ。
そのスローガンが、これじゃ。
"Let's Make America Great Again"
トランプと全く同じじゃなー。
もう分かったじゃろう。
トランプは、レーガン大統領を目指しているんじゃ。
それでは、レーガンはどんな大統領だったか、振り返ってみよう。
レーガン政権は、1981~1988年の8年間じゃった。
その前の、1970年代のアメリカは、Turbulent 1970s (激動の1970年代)と呼ばれる、衰退の時代だった。
軍事面では、ベトナムでの敗戦。
外交面では、イランパーレビ政権の崩壊、ソ連軍のアフガン侵攻、アフリカでもアンゴラ・モザンビークもソ連の影響力が強まり、世界各地で影響力は後退した。
アメリカの中庭、中南米でもエルサルバドルなど、社会主義政権が成立。
アメリカの威信は、地に落ちていたんじゃ。
経済面でも、欧州諸国や日本の経済力が増して、米国の経済力は低下しておった。
この結果、金とドルの交換は困難となり、大戦後の米国一強のブレトン・ウッズ体制は終焉を迎えた。
また、2回のオイルショックによるインフレーションと、ニクソン大統領とFRBによる経済・金融政策の失敗により、深刻なスタフグレーションが起こったのじゃ。
こんな時代が、ドナルド・トランプの青年時代じゃったんだ。
それでは、この状況に対するレーガン大統領の政策をまとめてみよう。
まずは、外交・軍事政策じゃ。
外交面では、アフガニスタンでは反政府ゲリラに対する軍事援助を開始した。
アフリカ・中南米でも同様、反社会主義勢力に対するてこ入れを開始。
そしてソ連本体に対して開始したのが、スターウオーズ計画と呼ばれた軍事政策じゃ。
ソ連の大陸間弾道弾を、宇宙空間で撃破すると云う、意欲的な戦略だった。
こうして、悪の帝国と呼ばれたソ連は、外交・経済・内政で破綻し、崩壊に至った。
スタグフレーションに対して行ったのが、レーガノミクスじゃったな。
レーガノミクスの柱は、以下の3つじゃ。
1.減税(所得税や法人税の大幅な減税)を実施し、企業の投資意欲を高め、経済活動を活性化させ
ることを目指す。
2.規制緩和:これにより企業の生産性向上と市場の効率化を図る。
3.政府財政の削減:社会福祉関連の支出を削減し、財政赤字の削減を試みた。
また、FRBと協力し、金利を引き上げ通貨供給量を抑制、インフレ率を低下させることに成功した。
トランプは、中国を倒し、国内の産業・経済を立て直して、第二のレーガンになりたいんじゃ。
実は、トランプがパクったのはレーガンだけではない。
彼は、ニクソン大統領も尊敬していたんじゃ。
ニクソン大統領が、米国の貿易赤字の拡大減少と国内産業を保護するために、1971年に実施したのが、輸入品に対する一律10%の関税課税じゃ。
その結果、輸入品の価格は上昇し米国市場での競争力は低下、米国製造業は一時的な恩恵を受けた。
それだけではない、全体的な物価の上昇は、インフレーションを加速させんじゃ。
特に、生活費必需品の価格上昇が家計に影響を与えた。
消費者は支出を減らし、その結果国内の景気は停滞した。
また、この政策は、日本やカナダなどの貿易相手国との関係も悪化させた。
ニクソンの輸入関税一律課税政策を総括すると、短期的には米国産業を保護する効果があったが、長期的には国際貿易の停滞や、米国の経済成長鈍化を招く結果となった。
その後、前述した2度のオイルショックが発生。
世界で初の、スタグフレーションが起きて、レーガノミクスにつながって行く訳じゃな。
トランプも馬鹿ではないので、過去には学んでおる。
肝になる原油価格については、国内での増産とサウジとの談合で、上昇しないように手が打ってある。
また、減税による財政支出の赤字を防ぐためには、強力な政府支出の削減を図っている。
関税増税に関する貿易交渉は、得意のディールでうまくやり、相手国と関係はまるく納める。
景気の停滞には、大規模減税による金利の低下誘導じゃ。
こんな風に、トランプなりに考えてはいるんだな。
しかし、ここ数日、実際に起こったのは、株安、ドル安、米国債が売られて国債安のトリプル安だ。
トランプの知恵より、”神の見えざる手の” 方が勝っておるように、私には思えるがな。
まあ、今回のトランプショックが、どうなるか。
当面は、静観するしかないな。
それでも、レーガンの時のプラザ合意のような、G7での通貨調整(ドル安誘導)程度で、終われば良いと思う。
(ニューヨークのプラザホテル:プラザ合意はここで決まりました)
プラザ合意でずっこけて、自分から平成の失われた30年に落ち込んでしまった、日本と違って。
今回の相手、中国は経済力も人口も多く、手強い国だ。
習近平とのチキンレースで、米中共倒れにならんことを祈るばかりじゃ。
吾輩はクロ先生であーる。