中国に花信風という言葉があります。
日本風に云うと花だよりの風でしょうか。
昨日今日と寒い風が吹いていますが、水戸の市内では寒紅梅が咲き始めました。
写真の梅の花1昨年の2月に周りの建物が映り込まないよう、夜に撮った我が家の梅のものです。
さて、春告草の異名もある梅ですが、中国原産とされ、我が国には弥生時代ごろに、食用ないし薬用として渡来したようです。
花木として、本格的に栽培・鑑賞されるようになったのは、遣隋使・遣唐使が始まった奈良時代以降のこととされています。
古今集を代表する歌人、三十六歌仙の一人、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)に素敵な夜の梅の歌があります。
春の夜の 闇はあやなし梅の花 色こそ見えね 香やは隠るる
この歌は、通常このように現代語訳されます。
春の夜の闇は無意味だ。
梅の花の色は見えなくなってしまうが、そのふくいくとした香りは、隠れるものか、いや隠れもしない。
この歌の、ふんわりとした雰囲気を生かして、無邪気な少女目線からガーリーに現代語訳してみました。
春の夜の闇って分けが分かんない。
だって 梅の花の色は見えなくっても 梅の香りから 梅の花が咲いているって分かっちゃうんだもん。
いかがでしょうか。
この和歌に触発されて、誕生した有名なお菓子があります。
とらやの小倉羊羹「夜の梅」です。
とらやの夜の梅は、紹介した躬恒の和歌にみられる情景を表現した羊羹です。
切り口の小豆を夜の闇に咲く梅の花に見立てて、この菓名がつけられました。
とらやの記録では、元禄7年(1694年)の古文書に初見されるそうです。
(京都 虎屋本店)
(京都 虎屋本店 カフェ)
(虎屋 東京赤坂店)
羊羹としての最初の記録は、文政2年とのことです。
200年以上前から作られているのですね。
とらやの羊羹には、夜の梅の他に、おもかげ、新緑があります。
(左から 夜の梅 おもかげ 新緑)
厳しい寒気の中で凜と咲く姿から、花言葉は、「高潔」、「潔白」です。
政治家の皆さん。
桜を見る会ではなく、ぜひ寒さを厭わず梅の花をみて身を正して下さい。
さて、梅は春の季語です。
最後に芭蕉の句を一つ。
梅が香に のっと日の出る 山路かな