褥瘡、皆さんこの漢字を読めますか?
褥瘡、「じょくそう」と読みます。
学術用語では、decubitus(デクビィトゥス)です。
褥瘡の漢字が難しいので、病院のカルテなどには、よく「デクビ」と略して記載したのを覚えています。
日常の臨床でも、何々さんにデクビができたとか、デクビがひどいなどと、よく使われていましたね。
日本国語大辞典では、圧迫性壊疽の一種。重症患者が長期間臥床している時、皮下脂肪の減少、皮膚循環の障害により、体重がかかる部位や、他の圧迫が体にかかっている場所にできる潰瘍。とこずれ。
となっています。
褥瘡の漢字を、もう少し詳しく読み解いてみましょう。
褥の字は、しとねと訓読みし、寝るときに下に敷くもの、布団のことです。
一方、瘡の字は壊死・感染などの内部要因により治り難い傷を意味します。
同じキズでも、創の字は切り傷や刀傷など治りやすい傷に対して使われます。
英語では、bedsoreと云われます。
最近では、発生要因を加味した pressure sore、pressure ulcer、pressure injury などの用語がよく使われるようです。
褥瘡は、長期臥床患者や寝たきり老人の専売特許と思われてきました。
しかし、現在この褥瘡が予期せぬ場所で大問題になっています。
それは、パラスポーツ選手の褥瘡です。
車椅子選手の殿部や四肢切断者における義肢装着部位にできる褥瘡です。
長期臥床者や寝たきり老人は運動量も少なく、体重も少ないため圧迫部位にかかる圧力はそう高くありません。
一方、パラアスリートは筋肉量が多く、運動量も多いため従来型の褥瘡とは異なる、より重症な褥瘡が生じます。
車椅子アスリートに多く発生する深部損傷褥瘡(deep tissue injury
:DTP)です。
DTPでは表在の皮膚組織ではなく深部の骨格筋組織の損傷が著しくなります。
このため、知らぬ間に骨格筋から組織障害が広がり、突然深い潰瘍が形成されるのです。
DTPは、皮下脂肪や筋肉が豊富な部位に長期間、強い圧力が加わった時に形成されやすいと云われています。
痛みを感じないため、車椅子アスリートにできる褥瘡は、競技の種目別に好発部位があるようです。
また、パラアスリートの中には、脊髄損傷による知覚障害を伴うものもいます。
結果として褥瘡発生に気づかず競技を続け、創傷感染を併発し数ヶ月に渡って日常生活に支障を来すことになります。
現在は、表在エコーを活用して、軽微な内に筋肉損傷を診断できるようになりました。
車椅子アスリートに対しては、スポーツドクターによる重点的な褥瘡予防ケアが求められます。