ホタルイカは、オホーツク海から日本海、太平洋側では熊野灘以北の、水深100~600mぐらいの深さに住む、発光性のイカです。

 

 

産地として富山湾が有名ですが、これは急峻な特殊な地形により、産卵期にホタルイカが集団で波打ち際まで押し上げられ、大量に捕獲できるためです。

 

富山地方では、マツイカとも呼ばれるようですが、冷蔵保存ができなかった時代、大量にとれたホタルイカが松の肥料として用いられたためです。

 

英語でもfirefly squidで、和名と同じです。

 

ホタルイカは晩春を表す季語で、晩春から初夏にかけてが産卵期です。

 

漁期は2月から5月にかけてで、主な産地は兵庫県、富山県、鳥取県、福井県などです。

 

昭和の末期から、富山湾以外でも底引き網漁が始まり、現在は兵庫県の漁獲量が一番多くなりました。

 

足が速くすぐ腐敗するため、昔は富山県のローカル・フードでしたが、輸送手段の高速化と冷蔵・冷凍技術の進歩で、今では全国で食べられています。

 

富山では、古くから炒め物、佃煮、酢味噌和え、沖漬け、天ぷらや唐揚げなど、火を通したものを食べていました。

 

ちょうど昭和のバブル期に、漫画の「美味しんぼ」で、ホタルイカを生で食べる踊り食いが紹介され、肝のおいしさが絶賛されています。

 

 

この影響か、平成になると店頭で生食用のホタルイカが販売されるようになりました。

 

ホタルイカには寄生虫、旋尾線虫がいるため、踊り食いや刺身で食べると、旋尾線虫幼虫移行症を発症します。

 

 

ホタルイカの生食は、酒のつまみとして食べられているため、本症の患者の大多数は中年男性で、子供や女性の患者は多くない様です。

 

病型は、腸閉塞型、皮膚跛行疹型、前眼房寄生型(ごく稀)があります。

 

最も多い腸閉塞型には、機械的腸閉塞を生じる劇症型と、麻痺性腸閉塞を起こす緩和型があります。

 

摂食後、数時間から2日後より腹部膨満感、腹痛と嘔吐が生じ、最終的に腸閉塞を起こします。

 

大半の例は、1~2週間の保存的療法で治癒しますが、劇症型の場合には手術が必要となる例もありますよ。

 

皮膚跛行疹型では、寄生虫を摘出します。

 

平成12年、厚生労省より生食用として販売する際には、内臓を除去しマイナス30度で4日間凍結すること。

 

と言う指導が行われました。

 

報告されている発症数は、毎年50症例以下のため、この疾患の認知度が低く、細菌性腸炎、アニサキス症と誤診されている例が少なくないと考えられます。

 

今がシーズンのホタルイカ、生で食べるのを避けるのが賢明です。

 

最後に。美味しんぼの主人公の一人、海原雄山のモデル、北大路魯山人は好んで食べたタニシが原因の肝臓ジストマ症で死亡したことをお忘れなく。