(お刺身を食べた数時間後に、強い腹痛が襲います)
アニサキス、この名前を聞いたことがありませんか。
アニサキスは、アニサキス亜科に属する線虫で、クジラ、イルカ、アザラシなどの哺乳類を最終宿主とします。
(これがアニサキスです)
イワシ、アジ、サバ、イカ、サンマ、カツオ、ニシン、ホッケのなどの大衆魚に寄生し、これらを刺身などで生食すると、胃壁や腸管壁に刺入し腹痛を起こします。
人の場合には、体内で成虫まで発育することはありません。
アニサキス症の発症は、魚を生食する我が国で最も多く、現時点では世界の発症数の90%は日本です。
全世界的な寿司ブームもありますので、今後は海外での発症も増加してくると予測されます。
さて、日本の現状ですが原因となる魚は、地方で差があります。
東北、北海道ではイカ、タラ、サケ、ホッケが多く、関東以西ではサバ、イワシ、アジが多いようです。
最近では、カツオ、マグロなど様々な海産物での発症が報告されています。
ある料理人の話では、カツオやマグロなどの赤身の魚では、調理中に見つけるのは難しくないそうです。
カツオでアニサキスになったら、調理人の腕が悪かったと思ってください。
一方、イワシやさばなどの青魚では、見つけるのが難しいとのことでした。
発生時期ですが、以前は11~4月の冬期に目立ちましたが、輸送の迅速化に伴い現在は9~10月にピークがみられ、通年で発症しています。
こんなわけで、アニサキス症はわが国では、ノロウイルス感染症についで食中毒発生数の第2位なんですよ。
さて、本症のポイントは、生鮮海産物の摂取後に生じる腹痛です。
寄生部位は、圧倒的に胃が多く、次いで十二指腸と小腸で、まれに大腸や食道で虫体が確認されます。
症状は、極めて激烈な劇症型と、ほとんど症状のない緩和型に分けられます。
初感染の場合には、軽症あるいは無症状の緩和型ですが、再感染ではアレルギー反応も加わり劇症型となります。
典型的な症状は、魚を生食した後、2~8時間以内に発生する周期的で、しばるような腹痛です。
腸管のアニサキス症では生食数日後に腸閉塞様症状や腹膜刺激症状を示します。
診断は、内視鏡で寄生した虫体を確認することで行われます。
(胃の中で見つかったアニサキス)
20%近くの例で複数の寄生が認められますので、胃全体を観察する必要があります。
治療は、虫体を内視鏡的に摘出します。
(内視鏡から鉗子を出して挟むことで摘出します)
腸アニサキス症では摘出は困難ですが、アニサキスは3~4日で死滅し、症状も1週間内に消滅します。
予防としては、調理の際になるべく早く魚の内臓を除去し、アニサキスの筋肉への移行を防ぐことが大切です。
マイナス20度以下、48時間以上の冷凍で死滅します。
高温に弱く、60度以上数分の熱で死亡しますので、加熱調理した魚は安全です。
かなり前ですが、人間ドック学会で長野県の施設から、人間ドックの内視鏡検診でのアニサキス症についての発表がありました。
海のない長野県でも多くはありませんが、まれでなくアニサキス症が起きるようです。
その理由は、輸送法が改善し新鮮な魚が、内陸の長野県でも供給されるようになった結果だ、と考察していました。
年末年始やお盆の季節は、医療状況が悪化します。
アニサキス症の注意をお忘れなく!