(新型コロナウイルスのパンデミックで、野外でのキャンプが大ブームです)

 

昨年は、大変なキャンプブームでした。

 

明日からは、いよいよ大連休が始まります。


天候に難がある様ですが、キャンプに出かける人も多いと思います。

 

今回は、キャンプと関連がある人畜共通疾患、ダニ媒介感染症について解説します。

 

(いろんな種類がありますが、ダニはこんな昆虫です)

 

ダニ感染症の発生頻度は、それほど多くはありませんが、近年の気候変動や鹿、イノシシ、その他の野生動物の活動域の拡大に伴い、近年増加傾向がみられます。

 

今年の発症数についての報告はまだありませんが、キャンプブームにより山野、特に河川敷などを訪れる人が増加すれば、その発症リスクが増加することが予測されます。

 

日本国内では、大型のマダニ類と小型のツツガムシ類が病原体となる、ウイルス、リケッチア、細菌を保有し、刺すことに人に病気を媒介します。

 

マダニが媒介するウイルス感染症には、最近患者数が増加傾向にある重症熱性血小板減少症候群(SFTS)やダニ媒介脳炎があります。

 

マダニが媒介する細菌感染症には、ライム病や進行回帰熱があります。

 

リケッチア感染症には、全国各地で発症がみられるツツガムシによるつつが虫病と、西日本で主にみられるダニ媒介性の日本紅斑熱があります。

 

この内、感染症法で四群感染症に指定されている、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、つつが虫病、日本紅斑熱について解説します。

 

これらは、比較的発症数が多く、しかも適切な診断と治療が行われない場合には致命的となる重要な疾患です。

 

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

 

この病気は、2011年に中国で発見されました。

 

マダニが媒介するウイルス感染症です。

 

我が国でも、その翌年2013年に初めて患者が確認され、四類感染症に指定されています。

 

以後毎年、感染者の報告が続き、2020年には年間患者総数は78例となりました。

 

これまでの累計患者数573例中、死亡者は75例で死亡率は13%です。

 

患者発生地は西日本が中心ですが、北陸地方での報告もあります。

 

感染地は野生動物が活動する山間部が多く、マダニの活動が高まる春から夏そして秋にかけて多く発生しています。

 

原因ウイルスに対する野生動物の抗体検査では、抗体が有する動物が全国的に認められているため、今後は全国的な患者発生が予測されています。

 

つつが虫病

 

小型のダニ、ツツガムシが刺咬して感染する、つつが虫病は我が国で最も多く発生するリケッチア感染症です。

 

(これがつつが虫です)

 

ツツガムシが生息する山野での野外活動を契機に感染します。

 

患者は、北海道を除く全国から年間500例近い患者が報告されています。

 

刺咬後、5~14日で発症、発熱・皮疹:刺し口が三主徴とされています。

 

発熱は39~40度に達し悪寒戦慄、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛、下痢・嘔吐を伴います。

 

皮疹は痒みのない紅斑として全身に発生します。

 

刺し口は発熱時に目立ちますが、報告例は85%ほどで認められない症例も認められます。

 

(つつが虫の刺し口)

 

適切な治療が行われれば予後は良好ですが、治療の遅れにより重症化し現在でも死亡例の報告が後を絶たない状態です。

 

日本紅斑熱

 

日本紅斑熱はマダニに刺咬されて発生するリケッチア感染症です。

 

紅斑熱群リケッチア感染症は全世界に分布していますが、日本での発見は遅く、1984年徳島県でその存在が初めて認められました。

 

当初は、西日本の太平洋岸を中心に発症が認められましたが、近年では発症が東日本にも広がり年間300例以上報告されています。

 

つつが虫病より死亡率は高く、2019年には13例の死亡があり死亡率は4.1%になりました。

 

日本紅斑熱の臨床症状はつつが虫病に類似していますので、本症を疑った場合には、最寄りの保健所に相談して、公的機関での診断確定検査を行う必要があります。

 

つつが虫病との鑑別点は、潜伏期が2~8日と短い、刺し口がつつが虫より小さく、周辺のリンパ節腫脹が目立たないなどがあります。

 

最後になりますが、今年になって新しいマダニが媒介するウイルス感染症が北海道大学から報告されました。

 

エゾウイルス感染症です。

 

2019に北海道でマダニに刺された後、発熱と下肢の痛み受診した患者から、過去に報告の無い新しいナイロウイルスが発見されたのです。

 

その後、北海道立衛生研究所が保有するダニ媒介感染症が疑われた症例の保存検体の検査では、7症例が確認されました。

 

その臨床症状は、重症熱性血小板減少症候群に類似しています。

 

道内の野生動物に対する抗体検査ではエゾシカで1%、アライグマで2%の抗体陽性が見つかっています。

 

これらの結果から、このウイルスが北海道内には定着していることが判明しました。

 

今後は、本州での調査が予定されいます。

 

以上、日本には無視できない数のダニ媒介感染症が存在しており、野生動物の活動範囲の拡大と、最近のキャンプブームによりその発病者数は、今後増加していくことが予測されます。