竹山人・雑念 ・・・ なでしこ Ⅱ

 

 七草と言えば、通常正月七日の七草粥に用いる早春の食用野草のことです。春の七草が薬餌として食するものであるのに較べ、秋の七草は古の大宮人が、山野の草花に抒情を託して選んだ万葉植物です。

 

 萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花また藤袴 朝貌の花

 

 山上憶良の詠んだ七種の草花のうち、朝貌の花は朝顔ではなく桔梗のことです。そして、これらの七草は奈良の昔から薬草として用いられて来ました。

 

 薬草としてのなでしこには、撫子ではなく瞿麦の文字が使われます。漢方薬としては、一般に瞿麦(くばく)と読まれます。なでしこの種子の乾燥品を瞿麦子と称して消炎薬、利尿剤として煎じて服用されました。

 

 中国では種子だけでなく、全草の乾燥品も瞿麦草と称して用いられました。我が国でも江戸時代には瞿麦草を民間薬として、排尿時痛や咽喉に骨が刺さったときに煎じて使用したと伝えられています。