ミュージカルやボディートークを
指導していていつも思うのは、
人に動いてもらうのは、
難しいということです。
専門学校で学生に話をする時、
以前はボディートークで
うまくいった事例ばかりを
話していましたが、
学生は失敗談も
聞きたがっていることがわかり、
それ以来、うまくいかなかった例も
話すようになりました。
私がボディートークの指導で
うまくいかなかった最大の例は、
指導者として駆け出しの頃、
中学生にボディートークを指導した
ときのことです。
120人くらいの1年生に、
2回シリーズでボディートークを
伝えることになっていました。
体育館に集まった学生に、
私は説明もそこそこに、
自然体運動で体を揺することを
指導しました。
ところが、やってみせようにも
一向に誰もやってくれません。
だからと言って他にどうするかなんて
何も考えていなかった私は、
25分近く、一人で運動していました。
背中たたきと心と体のつながりを
話したら、やっと、
やり始めてくれた学生たち。
あの魔の25分は、
今も思い出すとゾッとします。
学生の大事な時間25分も無駄にして、
私は代わりの手を何も準備しておらず
ボディートークを奇妙な体操として
伝えてしまった。
大変、反省しました。
幸いにして、もう一回、
リベンジする機会がある!
私は必死でボディートークの
説明を工夫し直しました。
いくら自分が知っていることでも、
教えるときには、それを
ゼロから立ち上がる。
相手に動いてもらうのは、
すごいことなんだから、
毎回、新鮮に、準備し直す。
人にはそれぞれの気持ちがあるから、
それを尊重した指導をする。
そしてなにより、
失敗にめげず、何度でも
立ち上がり、学び続けること。
私は人に動いてもらうために
指導者として大切なことを、
あの時の学生に強烈に
たたきこまれました。
リベンジは?
手のつなぎ方に表れる心の働きや、
人の癖に表れる性格と
そのほぐし方など、
中学生が喜んでくれる
テーマから入って、
体ほぐしを伝えて
喜んでもらえました。
してみせて、言って聞かせて
させてみて、褒めてやらねば、
人は動かじ。
山本五十六さんの言葉もまた、
身に染みます。