マネジメントへの挑戦「復刻版」 著:一倉定 | tobiuo23yoのブログ

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1965年に刊行された書物とは思えないほど、内容は新鮮でかつ刺激的。

関わった企業数に裏打ちされる経験値、そこから繰り出される一倉さんの一言一言は強く、重みがあり、そしてとてつもなくリアルである。とてつもなくリアル、これが一倉さんが他と一線を画すところであり、圧倒的なポジションであると感じました。実際にご指導は受けていませんが、書籍からもめちゃくちゃ学ばせていただきました。

ご子息さんが巻末に寄せておられる、お人柄を物語るエピソードも心奪われる内容となっています。

 

■一倉定さん

1918年生まれ。36年、旧制前橋中を卒業後、中島飛行機、日本能率協会を経て、1963年、経営コンサルタントとして独立。「社長の教祖」「日本のドラッカー」と呼ばれ、多くの経営者が師事した。指導した会社は大中小1万社近くに及んだ。1999年逝去。

 

以下、抜粋です。

本編は、①計画 ②実施 ③組織 ④統制 ⑤経営者 ⑥財務の6つの話題で構成されています。

 

■序文

これは挑戦の書であり、反逆の書である。ドロドロによごれた現実のなかで、汗と油にドロドロにまみれながら、真実を求めて苦しみもがいてきた一個の人間の、“きれい事のマネジメント論”への抗議なのである。

われわれの対決しているものは、現実であって理論ではないのだ。マネジメントの理論は、現実のためにあるのであって、現実が理論のためにあるのではない。現実は生きているのだ。そして、たえず動き、成長する。・・・打てば響き、切れば血がでるのだ。生きるための真剣勝負に、きれい事の公式論や観念論は通用しないのだ。タタミの上の水練では、水にはいっておぼれる。

 

①計画

「将来に関する現在の決定」、くだいていえば「将来のことをあらかじめ決めること」である。あらかじめ決めたことであるから、当然のこととして「その計画のとおりにやる」という考え方が導き出される。

すぐれた業績ほど、それが計画され決意されたときは不可視されているのである。「過去の実績」という尺度では計れないような計画でなければ、革新は生まれないのだ。“実現可能なもの”というようなマネジメントのきまり文句など、これらの業績の前には三文の値打ちもないのである。

世の中に障害のない仕事はない。また、その障害をそのまま計算のなかに入れてたてた計画なんて意味がない。そんな計画をたてて「計画を完遂した」と満足するやつはアホだ。

 

②実施

「戦捷の要は、有形無形の各種戦闘要素を総合して、敵にまさる威力を要点に集中発揮せしむるにあり」

重点主義に徹せよ。つまり裏返して考えてみると、“やらないことをきめる”ということになる。この判断と決断こそたいせつなのである。“完全に”、“もれなく”、“すべて”というような表現は、観念的にはまちがっていないだろうが、現実には、このようなことは望めないのである。

 

③統制

管理とは、計画にしたがって実施し、実績を計画に近づける努力をすることである。実績に計画を近づけることではないのである。計画を変更する場合はある。それは、あくまで外部情勢の変化に対応するためのものであって、社内活動のまずさによる計画変更は、してはいけないのである。社内活動のまずさを、遅れ、不良という形でとらえて、合理化をするためであり、合理化の効果を測定するモノサシとして活用するためである。

 

④組織

形はどうでもいい。組織は、バランスのとれたものでなければならない、という考えがある。バランスということばは、ほとんど無条件で人を納得させる不思議な魔力をもっている。バランスした組織とは、なんという保守退嬰(たいえい)的な考え方であろうか。すぐれた会社、成長する企業は、組織面だけでなく、いろいろな面でつねにバランスをやぶって前進している。アンバランスが成長途次の姿なのである。

 

⑤経営者

業績をあげうる人であって、知識・技術が優秀な人でもなければ、人格高潔なだけでもダメである。

よい部下になれないものが、よい上役になれるわけがない。よい部下の態度は、「上役は自分になにを求めているか」をはっきりと認識することである。

 

⑥財務

会社全体の財務体制、仕組みをしらずして経営はできない。

現事業利益をいかにして大きくするかをまず考え、つぎに企業の運営に必要な最低利益を確保した残りは、全て未来への事業費として投入し、研究、販売、人材の育成強化をはかる。未来事業費は、会社の経費として落とせる費用である。これの分に相当するだけ節税できるのだ。

 

2020年6月29日初版

日経BP社