今でも時々思い出すことがあります。
あれは冬に近い秋だった気がします。
まだ小学校低学年だった塾帰りの長男を幼稚園に入る前の次男の手をひきながら迎えに行った時のことでした。夜の8時ぐらいで、大通りを通れば良かったのですが、路側帯は狭く車も結構通るので、中の道を選び3人で歩いていました。民家は立ち並んでいましたが、歩いていたのは私たちだけでした。
歩き始めて5分ぐらいした時、前方から何かが近づいて来る、、、迫ってくる、、、
何だろう?
気づいた時は、すでにその三体の生き物は目だけを光らせて私たちを睨み、うぅ〜と
唸っていたのです。
これが野犬と言うものか!
と、初めて遭遇した感動と絶望が同時に私を襲いました。
私はペットとして飼われている犬でさえ怖いのです。私の頭の中で、きっと一番小さい次男から襲われる、、、最後は私、、、と、良からぬ想像が駆け巡りました。
が、怖すぎて1ミリも動けません。
その時、長男が今にも襲いかかりそうな3匹の前に数歩近づき、大きな声で、ワワワ、ワン!と叫んだのです。
あー、皆んなやられてしまう、、、お終いだ!
ところが、次の瞬間、3匹は申し合わせたようにクルッと踵を返し、トットットっと暗闇に消えていったのです。
ほんの僅かな時間のことでしたが、息子たちを庇おうにも恐怖で身体が動かず、何も出来なかった自分。
犬が大好きでドーベルマンさえもすぐにお腹を見せてしまうという長男。
その差はあっても、母として不甲斐ない無力な自分を痛感しました。
あれから、何十年も経ち、最近息子たちにあの時のことを聞いてみました。
次男は小さかったから覚えていない、と。
長男も、そんなことあったかな、、、と。
実は、あの時の恐怖と自分の無力さを再体験したくなくて、ずーっと聞けなかったのです。でも、今となっては素直に息子に感謝しています。
「助けてくれて、ありがとう」