ショートコラム<草食動物が持つ最強のパッシブスキル【反芻】とは一体どんな能力なのか?> | ナショナルけもペディア<ナショけも>

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こんにちは、アラフェネです。

 

今回は<反芻(はんすう)>の記事になります。

 

ウシやシカなどの草食動物を見ていると、口を常に動かいている姿を見ることができると思います。

 

ウシ科を含めた一部の草食哺乳類が行う特殊な消化行動として知られていますが、一体<反芻>とは、どんな行動なのか、役割やメカニズム、行う動物などを書いていきたいと思います。

 

今回は<ウシ科>を例にしていきます。

 

 

 

  反芻とは?

 

 

反芻(はんすう)>とは、草などを食物を一度飲みこみ、再び胃から口に戻すことで噛み直し、エネルギーとして得る消化行動の一連の流れの事です。

 

 

 


基本的に草類から、生きるためのエネルギーを得るには、主成分である不溶性炭水化物<セルロース>

分解しなければならず、他の動物の胃で行う消化酵素ではこの<セルロース>を分解することはできません。

 

<セルロース>は主に植物の細胞組織の大半を構成しています。

これをエネルギーとして活用するには、胃や腸の生息する特別な微生物で分解や発酵を行い、アミノ酸やタンパク質として取り出す必要があります。

 

この<反芻亜目(はんすうあもく>や<核脚亜目(かっきゃくあもく)>とよばれる、一部の草食哺乳類などはその特殊な消化行動が可能となっており、草の主成分である<セルロース>を分解発酵し、効率的にエネルギー源として吸収することができます。

 

 


 

 

 

〇分解発酵と吸収のメカニズムと役割

ウシ科などの胃は全部で4つの部屋に大きく分かれており、それぞれ第1胃~第4胃と呼ばれ、食物を効率よくエネルギー源に変えるため、各部屋で分解と発酵、吸収を繰り返し行っています。

 

 

第1胃は、体重の20~30%を占め、1~4胃の中では最大の容積を持ち、約200ℓの容積があります。

また、細菌や微生物が多く存在する部屋で、入ってきた食物を分解したり発酵などを行う非常に重要な役割をもっています。

 

 

まず、口に入った食物(草類)は、余り噛まずに大量の唾液(よだれ)で、一気にこの第1胃に流し込み、

草の主成分である<セルロース>を微生物によって分解発酵し、生命活動の燃料である<揮発性脂肪酸(きはつせいしぼうさん)>と呼ばれるものに分解されます。

 

また、第4胃で消化吸収されやすくするために、その食物に含まれる<タンパク質>も同じく微生物により分解され、それが微生物の体の一部のタンパク質となります。

 

しかし、第1胃には、1度に大量の食物がここに入ってくるため、

どうしても、分解しきれず、大きな飼料片などが残ってしまうため、第2胃のあたりで戻されてしまいます。

 

そこで、第1胃に残った大きな飼料片は、胃から口の中に飼料片を再び戻し、唾液と一緒に何度も噛み直し、飲み込みを繰り返すことで分解発酵を効率よく行うことができます。

 

これにより、第2胃で反芻に回されるのか、撹拌し仕分けされていきます。

第3胃については現時点であまり役割が解明されていません。

第4胃は、他の動物や私たち<ヒト>と同じ機能をもち、ここで<飼料のタンパク質>と<微生物の体の一部のタンパク質>を、さらに微生物により必須アミノ酸に分解され、吸収されます。


このような特殊な消化行動の一連の流れを事を<反芻(はんすう)>呼び、1日の大半はこの行動で費やします。

 

 

この必須アミノ酸ですが、<微生物の体の一部のタンパク質>と<飼料のタンパク質>には、草食動物の必要な<必須アミノ酸>を全て含んでいるため、これらが酵素で分解され、必要なアミノ酸を賄うことができます。

 

つまり、一部の草食動物が草だけで生きていくことができるのは、この<揮発性脂肪酸>と<微生物の体の一部と飼料のタンパク質>をエネルギー原として生命維持が可能となっているという事です。

 

 

動画:エランドの反芻の様子

 

動物の喉元を観察していると、上下に丸い塊みたいなのが動いているのが見えることがあるのですが、まさに

口を動かしながら反芻をしているということがわかると思います。

 

 

 

 

 

  反芻を行える動物、行えない動物

 

 

 

この反芻という行動は、セルロースを分解しエネルギーとする画期的な消化システムなのですが、

しかしながら、これは一部の陸上の草食動物だけが持つ、特有の行動であるため、陸上の肉食、雑食動物、一部の草食動物は行うことができません。

 

反芻が行えるのは<クジラ偶蹄目><反芻亜目(はんすうあもく)>である<ウシ科>、<シカ科>、<キリン科>、<核脚亜目(かっきゃくあもく)>である<ラクダ科>などが行うことができます。

 

しかし、草食動物だからすべての動物が可能かというと、そういうわけでもなく、ウマ目やウサギ目の動物は胃が一つしかない<単胃動物>であるため、反芻を行えません。

その為、消化メカニズムは異なり、胃ではなく、長い盲腸の微生物によって発酵分解をおこなっています。

 

 

テングザル

 

ただし、非常に珍しい例として<テングザル>という動物ですが、霊長目なのにも関わらず、胃が複数あり、反芻を行うことができます。

 

 

 

 

このように、草食動物は草を食べること、消化することに特化した体のつくりをしているのです。

これを踏まえて、喉や口の動きを観察してみてください。

 

今回の記事は以上となります。

最後までご購読ありがとうございました。

 

 

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○<X>アラフェネさん