ナレーション:加藤みどり
水都大阪100kmウルトラマラニック
今回で7回目を迎えるこの大会は、大阪城をスタートとゴールにして、大阪市の中央を流れる淀川は日本一の湖、琵琶湖から流れ出る唯一の河川。
その長さは75kmにも及び、大阪市民の喉を毎日潤しています。
その淀川河川敷を2往復するという精神的にとっても辛いこの大会。
そんな大会に4回も出場しているにも関わらず、ある問題を抱える人がいました。
黒衣(くろご)
彼が抱える問題
それは・・・
【物件02 貧相な黒衣】
『あのー。ど素人の西尾さんをウルトラマラソンに誘い込んで、“全力でサポートします!”と口走ってしまったものの、普通に走ったら、普通にサポートして終わってしますのも面白くないなーって思ったんです。』
『どうせなら、自分も新たな挑戦をやってみようと思って閃いたのが“黒衣”の衣装を着て100kmサポートするってことだったんです。』
『そして、いろいろと探してやっと見つけてきて試着してみたんですけど、あまりにも貧相なのに驚いてしまいました。』
『こんなことじゃ、西尾さんに申し訳なくて、合わす顔がない・・・・』
そんな依頼者の切なる願いを受けて一人の男がまたしても立ち上がったのです。
リフォームの匠
とびっちFC(40) 一級方向音痴
彼の今まで手掛けたリフォームは数知れず。
前回の大阪マラソンでは《カンフー小僧のマトリョーシカ設計》で、ランニング業界に旋風を巻き起こしたことは記憶に新しい。
時に、匠のひらめきは自分を犠牲にしてまで他人を喜ばせるという、“愛”という名にふさわしい。
『平和は笑顔から始まるのです』
何という温かな言葉でしょう。
いつしかそう思いながら仕事をこなしていくのです。
そんな彼を人は【関西生まれのマザーテレサ】と呼ぶのです。
その匠が満を持して、依頼者の元に訪れて、提示された金額は・・・
問題解決の為のリフォーム予算
3,000円
この限られた予算の中で、一体どのようなリフォームを見せてくれるのでしょうか。
匠の新たな『果つるなき挑戦』が今、始まるのです。
第一章 ランナー仕様
見ての通り、標準のものは単純に折り重ねて帯で巻くだけのもので非常に質素。
このまま走っていたら衣装がはだけてしまい、あられもない格好になってしまいます。
そこで匠は、内側1箇所、外側2箇所の合計3箇所に結び紐を取り付け、走っても型崩れしないようにしたのです。
更に匠は、淀川河川敷を走ることを想像して新たな工夫を施します。
河川敷は風を妨げる建造物が一切ないため、強風が襲ってくることがしばしば。
そうなってしまうと顔を隠す覆いが風でめくり上がってしまい、素顔が露出されてしまいます。
そこで匠は100均で見つけたマジックテープの片方を上着の胸のあたりに縫いつけ、もう片方を覆いにつけて固定することで、どんな強風に晒されようとも安心して走ることができるようにしました。
第二章 隠す
黒衣にとって自分の存在を隠すことが一番大事なことです。
其の中でも、顔を隠すということは非常に重要なことなのですが、購入したままだと覆いが薄くて顔が透けてしまいます。
恥ずかしくて西尾さんのサポートどころではありません。
そこで匠は考えました。
同じような網掛けを重ねることで、明るい昼間でも隠すことができるのではと。
更には網掛けの特性を活かせば通気性を確保でき、息苦しい思いをすることはないと。
匠は、その材料を見つけるために100均のお店を探していると、最適な商品を見つけたのです。
安全反射ベスト
反射板を丁寧に取り外して、覆いの形に切り取りって頭巾に重ねて縫い付けるます。
これで、陽の明るい時間帯でも確実に見えない反面、中からははっきりと外の様子を見る事ができるようになりました。
第三章 装飾
手甲。
手甲があるのとないのとでは、黒衣の完成度が全然違ってきます。
完璧を求める匠は一から作成することにしました。
またしても100均で購入したのは、女性が自動車等を運転するときに使う紫外線対策の手袋。
これをベースに作成していきます。
でも、このままではペラペラなままで全く使えないので、細工をしていきます。
甲の部分を補強するために、スマホの収納袋の少し固めの材質を活用しました。
厚紙で型をくりぬき、布に縫いつけ、手甲が走っているときにずれて来ないように、親指と中指を通すゴムをつけて完成。
見た目も完璧!
これで暴漢が西尾さんを襲おうとも、この手甲で凶器を払いのけ守ることができます。
匠は足元にもこだわります。
走るのは足袋と決まっていたので、履いてとりあえず確認してみると、何だか貧相。
そこで匠は針と糸を持つと、一本の紐を取り付けたのです。
一体どうなるというのでしょうか?
あら不思議!
紐で足元をくくるだけで、メリハリが出て何だか“おしゃれさん”になりました。
黒衣じゃなかったら、きっと多くの人々が振り返るぐらいの素敵な足に生まれ変わりました。
そして、最後に匠から粋な計らい。
なんとマイカップをプレゼントしてくれたのです。
しかも、カップホルダーを腰に巻けるように工夫をしてくれています。
最近、マラソン人口が増えるのに比例して、マナー問題が取沙汰されています。
特にエイドで使った紙コップやゴミを其処彼処に放り投げ捨てるのを見ると、悲しくなります。
匠は、仮装の一つとしてマイカップを装着することで、その問題を解決できると考えたのです。
依頼者のみならず、昨今のマナー問題をも考える匠の想いが詰まった今回の衣装。
一体どんな仕上がりになったのでしょうか。
12月に西尾さんのウルトラマラソンをサポートすると決めてから、購入し着てみたはいいものの、あまりにも貧相でどうしようもなかった≪黒衣≫の衣装。
依頼者の切なる願いを受けて、匠の完璧なまでの技で新しく生まれ変わることができたのです。
では、その全貌をご覧いただきましょう。
チャ~ン、チャラララ~ン、チャララララ~ン・・・
あんなに貧相だった黒子の衣装が、まるで歌舞伎の舞台で演者を介添えする本物の黒衣の衣装のようです。
着るだけで気持が引き締まり、背筋が自然と伸びて凛とした姿勢にさせてくれます。
多忙を極める匠が、依頼者の想いのすべてを黒衣に注ぎ込んだ“技”と“愛”によって新たな息吹を吹き込んだ《黒衣》。
果たして、依頼者は喜んでくれるのでしょうか。
CM
依頼者と約1ヶ月ぶりのご対面。
「えぇ!?これがあの黒衣ですか??全然判らなかったです!」
「早速試してみていいですか?」
依頼者がこの黒衣を羽織った瞬間、彼の存在が急に薄く感じたと思ったら、
「本当にありがとうございました!
これで誰にも気付かれずに西尾さんをサポートできます!」
覆いに隠された依頼者の頬から一滴の涙が零れ落ちるのでした。
「仮装なんて買って着るだけでいいんじゃない?」と言われ続けてきた匠。
匠の仮装に対する妥協なき想いが形になり、ゆるぎない愛情が依頼者のみならずいろんな人を幸せにしてくれる。
それを知っているからこそ、匠は手作りにこだわり続けるのです。
水都ウルトラまであと4日。
新しく生まれ変わった衣装を着た依頼者は、西尾さんと共に人知れず駆け抜けていくことでしょう。
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≪リフォーム費用 予算¥3,000≫
・足袋 ・・・1,700円
・紐 ・・・ 200円
・100均4点 ・・・ 400円
合計 2,300円
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(本音)
こんなんで走れるのかチョー不安(´-∀-`;)
~完~