短頭種気道症候群 | 戸部ウータン動物病院のブログ

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短頭種気道症候群とは短頭種と呼ばれる頭の大きさに対して鼻が短くつぶれているわんちゃん(ブルドック、フレンチブルドック、パグ、ボストンテリア、狆、ペキニーズ、キャバリアキングチャールズスパニエル)によく見られる上部気道における疾患です。症状は呼吸が苦しそう、いびきをかく、ぜーぜーやガーガー、ぶーぶーといった呼吸をする、咳をする、水を飲んだ後にむせるなどがみられます。進行が重度の場合には、熱中症や呼吸困難、失神を起こし、死亡する場合もあります。

 

 

 

 

 

短頭種気道症候群の解剖学的な異常鉛筆

 

①鼻腔狭窄

短頭種のわんちゃんは生まれつき鼻の穴が狭いため呼吸がしにくい構造になっています。

 

②軟口蓋過長

鼻の穴が狭いため、鼻で息をするときに軟口蓋(人でいう喉ちんこ)が陰圧でひっぱられ、軟口蓋が過剰にのびて厚くなります。

 

③喉頭小嚢の外転

喉頭小嚢が外転を起こすことによって空気の通り道が狭くなることがあります。

 

④喉頭麻痺

 努力性呼吸(空気を吸いにくいのに無理やり吸おうと呼吸すること)を続けることにより、喉頭で過剰な陰圧がかかり喉頭に炎症や浮腫が起こります。その結果として喉頭麻痺がおこり、より空気の通り道が狭くなります。

 

⑤気管虚脱、気管低形成

 気管虚脱は息を吸うときに気管がつぶれて息が吸えなくなってしまうことです。気管低形成は呼吸に関係なく、もともとの気管の成長が不十分なことにより、気管が常に狭い状態が続き息が吸いにくい状態が続きます。

 

 短頭種気道症候群では、このような解剖学的異常が組み合わさって進行性に症状が起こります。他にも、無理やり空気を吸い込むことにより胃にガスが貯まり嘔吐を起こしやすくなったり、吸った空気が腸に行くことによって腸内環境が変化し下痢をしやすくなるといった消化器症状が見られる場合もあります。

 

 

 

 

 

診断法鉛筆

 外鼻孔の狭窄は肉眼で診断できます。それ以外の疾患については、レントゲンや麻酔下で確定診断を行うことができます。

 

 

 

 

 

 

治療法鉛筆

内科的治療

 本的な治療は外科的治療のみです。そのため、内科的治療では一時的な対症療法で、喉に炎症が起こったら炎症を抑えるお薬を投薬するなどの方法となります。

 

外科的治療

若齢の内から予防的に外科的治療を行うことで、短頭種気道症候群の症状を抑えたり喉頭麻痺といった難治性疾患の併発を防ぐことが出来ます。高齢の短頭種では、麻酔や手術のリスクも上がるため、若齢の内の外科的治療をおすすめします。

 

①鼻腔拡張術

短頭種の多くが生まれながらに鼻孔が狭いことが多いので、鼻の一部を切除し鼻腔を拡張する手術を行います。

 

②軟口蓋過長

 伸びすぎた軟口蓋を切って短くします。ただし、1度切除しても軟口蓋がその後も伸びて呼吸を邪魔する可能性もあるため、その場合には再び伸びた軟口蓋を切除する必要があります。

 

他にも、根治を目指す場合は疾患に対応して外科的手術を選択する必要があります。

 

 

 

 

 

短頭種のわんちゃんの注意点鉛筆

 

短頭種のわんちゃんは

 

①肥満 (一番大事です!)

②熱中症

 

 

に特に注意しましょう。

 

 

肥満の場合、呼吸がしにくい状態が常に続き短頭種気道症候群を悪化させます。

また、この時期は熱中症に非常にかかりやすいです。他の犬種とは違い短頭種の熱中症は命取りになりますので、無理なお散歩は控えましょう。お散歩をする際も、首輪ではなく胴輪も検討しましょう。