猫の脳炎・脊髄炎
ウイルスや細菌・真菌などによって脳や脊髄が炎症を起こした状態です。
脳や脊髄の組織が破壊されると発熱や発疹、麻痺、痙攣などの神経症状が見られます。
原因としては
・伝染性腹膜炎(ウイルス性)
・猫エイズ(免疫不全症)
・クリプトコッカス症(真菌)
・トキソプラズマ症(寄生虫)
・フィラリア症(寄生虫)
などがあります。
治療には薬物療法が主でそれぞれの原因に応じた抗生剤や駆虫薬の投与が必要です。
また対症療法として抗けいれん薬やステロイド、利尿薬など様々です。
これらの初期症状は風邪と似ているため、発見が遅れて後遺症が残る事があります。
当院での症例
突発性前側頭葉脳炎
チンチラの子。
突然歩けなくなったとのことで来院されました。
食欲がなく、吐き気が続き、頭部振戦(頭が左右に震える)がありました。
右後肢の姿勢反射も弱くなっていました。
血液検査・レントゲン・エコー検査・尿検査など精密検査をしましたが、特に問題ありませんでした。
脳疾患を疑いMRI検査をしました。同時に脳脊髄液検査も実施しました。
左前頭葉に一部炎症を疑う像がありました。
脳脊髄検査から猫伝染性腹膜炎やトキソプラズマ・真菌などの感染症は否定的でした。
炎症細胞も少なかったため壊死性脳炎やその他原因不明の脳炎の可能性もあります。
確定診断には病変の細胞を病理検査できるといいのですが、現実的ではありません。
非感染性の脳炎疑いの為ステロイドでの治療を行いました。
投薬後3週間ぐらいでかなり改善しました。
元気食欲もあがり、神経症状もほとんどなくなりました。
現在は休薬し、定期的な経過観察をしております。
神経症状が出ている場合、原因の早期発見早期治療が重要です。
なかなか全身麻酔をかけてMRIを撮ることや脳脊髄液検査に抵抗はあると思います。
しかし、感染症の場合ステロイドの使用が致命的になる場合もあります。
また原因に病原体に対して有効な薬を使用しないと進行が止まらない場合などもあります。
よく主治医の先生と相談して治療方針を計画することをお勧めします。