会陰ヘルニアは、肛門のまわり(会陰部)にある筋肉の間に隙間ができ
そこにお腹の中の臓器が飛び出てしまう病気です。
5歳以上のオス犬に多く見られます。
腸が飛び出した場合には、便秘や排便困難が見られるようになります。
まれに膀胱が飛び出した場合には、膀胱が反転するため排尿障害が見られます。
会陰ヘルニアは、骨盤隔壁の脆弱化(会陰部の筋肉が弱くなること)がおもな原因となって発症します。
去勢手術を行うことで発生率は低下します。
この脆弱化には男性ホルモンの影響や腹圧の上昇や筋力の低下を引き起こすような病気などが
関係していると考えられていますが、不明な部分も多いです。
また、無駄吠えが多いと腹圧が高くなってくるため、むだ吠えをさせないようにしつけことが重要です。
肥満していると内臓脂肪が増えるだけでなく体全体の筋力が低下しやすくなるため
肥満をさせないといったことも予防につながります。
今回の子は腸が飛び出した為、便が溜まってしまい、排便困難になってしまいました。
手術の前に血液検査、レントゲン検査、エコー検査にて腹圧が上がる原因、筋肉が弱くなってしまう原因があるか調べました。
特に腹圧がかかる原因はありませんでしたが、肝臓がやや大きく、血液検査の結果から
副腎皮質ホルモン亢進症という病気があるかもしれません。
この病気にかかると筋肉が薄くなってしまうことが知られています。
また去勢手術をしていないことも原因の一つと考えられます。
手術は基本的には穴を塞げばいいのですが、どう塞ぐかで色々な術式があります。
また会陰ヘルニアは再発率も高く、片側を塞ぐと反対側にヘルニアを起こす場合もあります。
排泄物の通り道が近いので、感染の危険性も高く、術後のケアも重要になってきます。
今回の子は穴が比較的大きかった為、他のしっかりしている筋肉(今回は内閉鎖筋という筋肉)
を使い穴を塞ぎました。
内閉鎖筋の近くには坐骨神経という後足を支配する神経がありますので
傷つけないように細心の注意が必要です。
再発予防のため去勢手術も一緒に行いました。
再発しないか今後もよく経過を観察していかなければなりません
再発しないことを祈っております
手術1週間後です。
だいぶ傷口もくっついてきました。
排便も順調にできています。
神経障害もありませんした。
手術3週間後です。
無事抜糸も終了しました。
会陰ヘルニアの再発がないか今後も経過観察が必要です。
手術2ヶ月後です。
毛もしっかり生え揃いましてどこを手術したかわからないぐらい回復しました。
排便状況も順調です。
今後もフィラリアやワクチン、トリミングのときにでも、定期的に経過をみていきます。