食監

 

この仕事をしていてよく思うこと。

 

世の中がどんどんつまらなくなってゆく、、、。

 

我々食監は、職業柄様々な食品の調理・製造現場を確認します。本来食品は高い衛生水準で調理・製造されるべきもの。

そんなことはわかっています。そうなるように、必要な指示、指導、助言はします。

が、しかしまた、そこまでの衛生水準をがなくとも、食品等事業者が食を提供できてしまうのも事実。

 

前置きはこれくらいで。職業柄、知りたくないけど知ってしまったことで、絶対に行かないもの、食べないものがあるわけですよ。

このシリーズは、食監目線で「いかない」または「食べない」ものを紹介します。

 

第一回目は「祭り」


浴衣や甚平を着て、靴にしておけばよかったと、慣れない鼻緒で足が痛い中、盆踊りを片目に、広がる屋台。ぶら下がる薄暗い提灯に、ソースやざらめのにおいが充満する。威勢のよいかけ声。同じような屋台なのに、行列がある屋台は、よりおいしそうにみえる。


なーんてのは、入庁前。今は屋台を見るだけで、「げっ」。


しかし、食品衛生的には、なかなか屋台のメニューってよくできてるんですよ。


食中毒予防の三原則というのがあって「つけない」「ふやさない」「やっつける」がその三つ。屋台におけるメニューはこのうちの「やっつける」に焦点が当てられています。

「つけない」というのは、菌やウイルスなどの微生物付着させないこと、「ふやさない」というのは、微生物を増やさないこと、「やっつける」というのは、微生物を殺すことをさします。


屋台で言えば、

「つけない」

いや、手も洗わない人たちが下処理や調理した食品に微生物がついていないわけがない

「ふやさない」

屋外に放置された食材に微生物がわかないわけがない

「やっつける」

高火力の鉄板などの熱で、おなかが痛くならない程度まで微生物量を減らす。


そう、食品衛生的もよーくコントロールされた、

おなかは痛くなることがない不衛生な食品with髪の毛などの異物があってもおなかは痛くならないから無視

という食品なのです。


ただしこれは、昔ながらの屋台メニューの話。B級グルメや映え文化が取り上げられて以降、屋台でも何でもかんでもやり始めている近年、この原則が難しい食品も。

そもそもの屋台メニューは、毒素が産生される種類の食中毒菌がいない食材を使っているために、さきほどの食中毒予防の三原則が有効となる。

ここで、米飯や乳製品が登場すると、この理論が崩れ、たとえ十分に加熱しても、体調を崩すメニューが誕生する。


はい、どんどん食欲がなくなったあなた、正常です。


しかしここで、一般的に世の中から反論が出ます。


祭りは文化だろ!と


いつも思うんですよね。鶏肉の生食も、文化と抜かしおる愚物がたくさんいますが、文化って、人の生命財産の維持向上に反するものでも、そこまで優先されるものなのですかね?


そもそも、多くのイベントやお祭りの屋台、基本的に保健所で管理監督されていません。食品営業許可なんて取ってない。祭りだから、ということで、保健所に届けくらい出てればまだいいもの。出ててもメイン会場のみ、周囲の露天なんぞ、ゲリラ的に出現し、祭りの主催者も把握しておらず、その場の利益さえ上げられれば、という事業者がやりたい放題。みなさん気持ちは学祭くらいのノリ。本来営業許可を取得しなければいけないものなんぞ、誰も思ってない。


最近は、コンプライアンスにクリーンなイベントや祭りも増えていて、会場ごとやキッチンカーや屋台に営業許可書が掲示されているお祭りも見るようになったけど、未だに多くのイベントは、行事主催者(の下部団体)が勝手に集めて、勝手にやっている。

なので、あとからおなかいたくなろうとどーなろうと、誰がどこでなにをやっていたかも分からないし、だから保健所も調べられないし、誰も責任もとってくれない、最大級の自己責任フード。


前に体調不良呈された方から電話で言われました、「泣き寝入りってことですね。」。


はい、イエス。

立場的に、調査します、とは言います。ただ、結論は出てるんですよ、電話切った瞬間に。


調査不能。


何で取り締まらないんだ!ってお声もあるかと。


いいわけがましいいいかたですが、やってないわけではないです。


いやしかし、無許可前提で地方からうじゃうじゃ集まってきて、当日ゲリラ的に現れて、地元から暴利をむさぼって帰る奴らなんぞ、どこの誰かも分からないし、現行の衛生法規では取り締まりりきれない。


そもそも、国は取り締まる気なんてない。屋台の営業許可の制度はすべて都道府県市が独自に条例で敷いている。あればよいが、屋台の営業許可制度すらない都道府県市もたくさんある。

現行の食品衛生法の制定時には、国の検討委員は「(屋台の許可なんぞ)この場で検討する話題ではない」くらいのことを言いのけている。

このほか、厚労省に昔から根付く「宗教不介入の原則」。

あの強権の固まりである薬機法や医療法であっても、宗教法人の効果効能付きの薬風の精水や医療機器風の壷などが取り締まられない。

祭りも同じ、神憑っているもの。


さらに、能力的にもこういった祭りを取り締まる体勢でもない。全国の保健所の職員数は約3万人(内食監は約8,800人)。消防署員は17万人、警察官数は26万人。人数だけでなく、保健所だけ交代勤務でないなど、休日、夜間の対応ができないなど、マンパワー的にも無理なのだ。


そんなのおかしいだろ!


いや、そもそも祭りがおかしい。

大量に酒ひっかけて、神様の御名の下、夜中までバカ騒ぎする。一度コロナ禍でリセットされたのに、またこの令和の時代に復活している。

酒の席でもアルハラなんて言葉がある時代に、祭りってやつは、日常生活をじゃまして公道を占拠し、あちこちで火起こして、昭和の感覚で調理し飲み食いする。守らないといけないタガをはずして、正直なにがやりたいのか分からない。


お祭りやイベントかにお出かけされるみなさまへ

食品営業許可書が掲示されていない屋台は、保健所の許認可を経ていない可能性があります。また、いずれにあっても、屋台での調理は、一般的な飲食店ほどの衛生管理はなされておりません。

小さいお子さまやお年寄りの方は、お召し上がりにならないことを強く推奨します。


建前のある役所がこんな啓発はできないけど、ほんとは、消費者にも知ってもらう機会を作らなきゃいけないんじゃないか。よくよく思います。