ロートレック荘事件 | とあるワナビーのライトノベル作家になるための追憶

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ロートレック荘事件 (新潮文庫)/新潮社
¥594
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最高評価S~最低評価F
【文章力】A
【構成力】S

【キャラクター】A

【設定】S

【総合】S

【あらすじ】

夏の終わり、郊外の洋館に将来を約束された青年たちと美貌の娘たちが集まった。ロートレックの作品に彩られ、優雅な数日間のバカンスが始まったかに見えたのだが…。二発の銃声が惨劇の始まりを告げた。一人また一人、美女が殺される。邸内の人間の犯行か? アリバイを持たぬ者は? 動機は? 推理小説史上初のトリックが読者を迷宮へと誘う。前人未踏のメタ・ミステリー。

【感想】

見事に騙された。文章の中に違和感を見つけ、注意深く読み進め、なおかつ何度も前に戻って確認したのだが、最後の解答編で明かされた真実はこちらの想像の上を行くものだった。明かされてみて、それまでの違和感が一瞬にして霧散し、かつ全身に鳥肌のようなものが走った。最初から最後まで緻密に積み上げられたストーリー。予備知識なしでこのトリックに気づくのは至難の業。
さらに、この小説はトリックだけでなく人間の感情やら動きやらを描ききっている。それぞれの登場人物に魅力があり、特に主人公、犯人、そして犯人の身近な存在の関係性、それぞれを思う気持ちや、すれ違い。それが明かされた最後には胸にぐっとくるものがあった。幸せになれる未来があったはずなのに、あと少しで手が届きそうだったのに、くしくも外れてしまった道。
まさに、前人未踏のメタ・ミステリーだった。