まだ『写るんです』で写真を撮っていた頃のこと。


私は、とある企業チームを応援する活動をしていた。



そこには歳の近い学生が20〜30名程所属していて

どうしたら新規のファンを獲得できるのか、

盛り上がるのか、みんなでアイデアを出し合い

イベントの手伝いなどもさせていただいた。



学校に心を許せる人が一人もいなかった私にとって

この活動と仲間は本当に救いの存在であった。


学生しか所属することができないというルールがあったので、まるでサークルのようで、まさしく私の青春そのものといっても過言ではない、かけがえのない経験をさせていただいた。


ソフトクリーム


その仲間に、稲村くんという

私よりも年上の大学生がいた。


彼の見た目はヲタクそのもので

話し方もやや独特。

誰でもモノマネできるレベルの個性的な存在だった。



彼のインパクトは相当なもので

彼と同じ時期にいなかったはずの人まで

「稲村くん」の存在は知っていて

もはや伝説となっていたほど。


彼のとんでもエピソードの数々をいくつか紹介しよう。

いや、させていただいてもよろしいでしょうか。




稲村くんは

月に一度の会議で必ずミルクティーと

アイスクリームをいくつも持参し、会議中隠しもせず食していた。


それくらいならまだ、

乳製品が好きな人というレベルかもしれないが

稲村くんの凄いところは

時間が経ち液状化したバニラアイスをずるずると

人目を気にせず飲んでしまうところであった。


しかも、会議中に…本社の会議室で…


まずはアイスを先に食べるべきでは…

とか

溶けるものなんだから、せめて一つにすればいいのに…


などと、ツッコミどころが満載すぎて

お笑い芸人でなくても簡単にツッコめる。


しかし、会議中につきツッコむことが出来ない

ストレスがのしかかるのが厄介だった。



アイスといえば


グループで当時よく利用していた

『アジアンキッチン』というアジア料理屋で

みんなで食べようと、名物の巨大パフェを注文した時のこと。



暗闇の中、景気良く弾ける花火が飾られ

注目を浴びながら登場した

高さ50センチ位の巨大パフェがテーブルに届き

さあ、みんなで食べよう!!とスプーンを入れたところで稲村くんは言ったのだ。


「ぼくのーぱふぇーー」と。


抱え込むようにパフェを独り占めした稲村くんに

我々は唖然。


そんなのお構いなしに稲村くんは黙々と

パフェを食べ続けた。


それを見守る私たち。



でも、不思議なことに

稲村くんに対して誰も怒らないし


「ま、稲村くんらしいや😁」で片付いてしまうのだ。


これだけ書いていると

稲村くんをディスっているように思われるかもしれないが、みんな稲村くんというキャラクターが好きで


今日は何をするんだろう??

と目が離せなくて、なくてはならない存在であった。



つづく