元から分かっていたことだ。


「何が正しくて、何が悪いのか。」


いや分かっていたと言ったら語弊を生むだろう。分かるようになったと


言うべきか。


 それは下校時に起きたことであった。今日は土砂降りの雨であった。


「イヤーすごい雨だ。どうする、歩いて帰る?それとも自転車で帰


る?」


それを言ったのは俺の親友のM。俺は少し考える。


 どうすべきか?歩くべきか、自転車に乗るか…。


 そう考えている俺の目をMはのぞき込んでくる。


「おーい、なんか返事しろよ。無視はいかんぞ!」


ハッ、俺としたことが物思いに耽って親友に返答をするのを忘れてし


まっていたではないか。


「お、おう。すまん。」


とりあえず言葉を返す。


 しかしどうしたものか?このままでは答えが出ない。迎えに来てもら


う?いやいやバカなことを言ってはいけない。来るはずがない。親は今


仕事中なのだ。


 そこで一つの答えに行き着く。


「全力で自転車をこいで五分で駅まで行く」


なんと画期的な答えだろうか。早く着くと言うことはそんなに濡れない


ということの裏返しである。ならばどうして自転車で帰らないだろう


か、いや帰るだろう。


「自転車でとばして帰るぞ!」そうMに言って自転車にまたがる。


 俺が乗った自転車は雨を切り裂くがごとく疾走する。俺はもっとス


ピードを上げるためにギアをチェンジする。三から六へ。チェーンは軋


みギリギリと音を立て重くなる。俺たちにかかる雨は槍のように重かっ


た。それからの記憶は無い。


 気がつくと駅に着いていた。俺たちは勝ったのだ。この逆境の中に正


しさを見いだしたのだ。


 しかし俺はMの異変に気付く。いつもなら自転車置き場に自転車を止


めると直行で駅のホームまで行くのだがなかなか来ない。


 Mを確認すべく自転車置き場に戻る。しかしMの姿は無かった。


 ――どこへ行った?Mは?


五分後――Mは歩いてホームに来た。「イヤー止めたのに聞かないか


ら、それに歩いて来てもその時間には乗れたよ。」そう言う彼は濡れて


いなかった。


要は正しさとはいくつもあるものでそれが一つとは限らない。色んな方


向から見た正しさがあるのだ、と今はそう思っていたい。


そう言った彼はびしょ濡れであった…。