映画『山の音』日本、1954年。
原作は川端康成。監督は成瀬巳喜男。
原作は未読ですし(これは少し恥ずかしいです…)、どんなストーリーなのかも知らず、先週NHK-BSプレミアムで「原節子出演の映画の一つ」として放送されていたのを、何の先入観も知識もなしに観ました。
戦後、鎌倉に住み東京へ通勤する主人公の老サラリーマン(山村聡)は、妻・長男(上原謙)・嫁(原節子)と暮している。長男も同じ会社に勤務しており、彼には女がいる。嫁は舅である主人公を敬愛し、主人公も夫に裏切られている嫁を労わる関係になっている。家を出た次女の夫にも女がいて、その夫婦関係は険悪であり、やがて次女は鎌倉の実家へ子供2人を連れて戻ってくる。主人公は長男の女関係を清算させるべく動く。そんな中、嫁が自らの意志で堕胎したことが明らかになり…という、明るくないストーリーの家族ドラマ。
はっきりいって家族間でのギスギスした神経戦に観ていて胃が痛くなる映画でした。
が、観終えて「たぶんこれは“名作”だ」と思いました。
そして「原節子出演の映画の一つ」というよりも、「山村聡の好演、あるいは“神がかり”的超絶な演技が光る名画」だと感じました。
原節子は、夫に女がいることを知りながら、それに耐え、愛想笑いを超えた笑顔で嫁ぎ先へ尽くす淑女な嫁という難しいと思われる役を好演しています。
しかし、そうした嫁を不憫に思い労わる舅というこれまた難しそうな役を、山村聡は原節子を上回る好演をしています。
そして、この二人の掛け合いのシーンが凄いのです(DVDのジャケットも二人の掛け合いシーンの一つです)。
特にラストシーン。
嫁と舅という本来は他人の関係でありながらも、本当の親子以上ともいえる愛情でお互いに接するシーンは、エロティックではなく、心温まるものでもないのですが、しかし真の愛情を感じました。(観る人によってはここに(爽やかな)エロティックさや温かさを感じるでしょう。)
成瀬監督は原節子が何度も出演した小津安二郎監督の映画作品を意識して本作を構成しているはずで、それは成功したのではないかと思います。
嫁・舅の関係をこの二人がしっかりと演じたことによって、家族内でのギスギスした関係はから来る痛々しさが中和され、映画にまとめられています。
(こうしたギスギスさは、1980年代以降の日本映画だと、コミカルに描くことで和らげることが多いのではないかと思いますが、そうしたコミカルさは本作品には全くありません。)
時間を置いて繰り返し観てみたくなる映画だと思いました(原作もいずれきちんと読んでみようとも思いました)。
