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落語探偵事務所

落語・講談・浪曲、映画、囲碁・将棋、文学、漫画、その他備忘録を兼ねて綴ります。読みたい本、観たい映画、聴きたい落語、並べたい名局、たくさんあります。書き過ぎでネタバレするかもしれないのでご注意ください。



映画『この世界の片隅に』日本、2016年。

昨年公開の大ヒット映画ですが、昨日8月27日にようやく観てきました。

言うまでもなく良かったです。
原作の大ファンだったので、一体あの原作の世界はどう再現されているのか、壊されてはいないか、など不安もありましたが、全くの杞憂でした。
原作の世界観を保ちながら、原作を超え、アニメでしか描けない世界へと観客を誘(いざな)うものでした。

ここ数年の日本映画の中で最もいい映画でした。

この映画の良さは色々な人がすでに解説していて、私が新しく言いたいことはないのですが、少しだけ。
(ネタバレっぽいのもありますが、もう公開から半年以上経っているのでよいでしょうか。)

戦前の広島と呉の街中の様子に衝撃を受けました。
大勢の買い物客で賑わっている近代的で文化的な広島の姿。
大きな軍港を抱え海軍の将校で賑わう呉の姿。
戦前のこうした華やかな都市の姿はいままで全くと言っていいほど知らなかったですし、想像したこともなかったので、ここは印象に残りました。

暗い戦時下の広島・呉で、主人公・すずさんをはじめとする登場人物たちのささやかな日常を細かく描いていて、まるですずさんの嫁ぎ先の北條家の一員になったような気分で観ることができました。
昭和19年頃からの戦況の急激な悪化の中、軍港都市である呉も頻繁に空襲に見舞われるわけですが、その空襲の記録を全て作品の中に書き込むという凄い方法を取っていて、観ていて驚きました。

義父のお見舞いの帰りに空襲に遭い、不発弾を装った時限爆弾によって、すずが姪の晴美を亡くし、また自分の右手も失くすシーン。唸ってしまいました。

8月6日の朝のシーン。山向こうの広島市内の方角からの閃光と風圧ときのこ雲。圧倒的な暴力を抑制的に描きながらリアリティを持たせるその技にやはり衝撃を受けました。

戦後のすずさんたち北條家、実家である浦野家の描き方は寂しくもありますが、希望を持たせるもので…。
原作の最終回の内容をそのままコトリンゴの歌にしていたのには「うわっ!やられた!」と思いました…。

観終えて悲しさと寂しさと温かさの混じり合った不思議な不思議な感情に包まれました。
最後の最後までスクリーンに目が釘付けの本作品を観ることができて昨日は本当に幸せでした。
(もっと早く観ればよかったと少し後悔もしました。)
まだ観ていない方、ぜひ映画館へ急いでください。


なお私が行った映画館は「イオンシネマ幕張新都心」


音響は、劇場の宣伝によると「ULTIRA9.1ch上映」とのことで、好評だった様子は知っていましたが、凄かったです。音に包まれているような感覚に陥りました。調整してくださった片渕監督、9.1chでこの8月まで上演してくれたイオンシネマ幕張新都心のスタッフの方々、ありがとうございました。