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落語探偵事務所

落語・講談・浪曲、映画、囲碁・将棋、文学、漫画、その他備忘録を兼ねて綴ります。読みたい本、観たい映画、聴きたい落語、並べたい名局、たくさんあります。書き過ぎでネタバレするかもしれないのでご注意ください。




映画『狂った果実』日本、1956年。

 

かなり前に原作を読んだことはあったのですが、何気なく映画版を観ました。

 

戦後日本社会への苛立ち、あるいは怒りを有する原作者である石原慎太郎の叫びが満ち溢れる青春物映画です。戦後10年余りの昭和31年(1956年)の鎌倉の裕福そうな家庭に育った大学生兄弟のひと夏の不良素行記です。

 

主演は原作者の実弟である石原裕次郎。その弟役に今年亡くなった津川雅彦。あたり前ですが、津川、若いです!脇役で岡田真澄。岡田も若くて超かっこいいです!後年に石原裕次郎と結婚する北原三枝、美しいです。それから超脇役で石原慎太郎と津川の兄である長門裕之もほんのちょこっとですが出ています。

 

作品に込められた「反教養主義」「反権威」「廃退(or頽廃)で何が悪い。堕落で何が悪い。頽廃万歳。堕落万歳」の主張の強烈さに仰け反ります。おそらく原作者の石原慎太郎は、この間私が観ている小津安二郎の映画作品など「糞喰らえ!」「インチキだ」「マヤカシだ」と吐き捨てる気分と態度であったことでしょう。その作品はそうした原作の気分をひじょうに上手く吸い上げて映像化しています(原作執筆の時点で石原慎太郎が日活との交渉で映画化の際の主演は実弟の裕次郎で、と契約していたそうなので、当たり前ですが)。

 

昭和60年代から平成にかけての青春時代を送った当時の私が観ていれば理解できるところは少しありますが、歳を取ってしまった今の私ではこの映画の世界には共感し難いです。平成30年の今の若い人にはどこかの外国の映画のように思えて、なかなか理解も共感もできないのではないかと思います。

 

とはいえ、映画の後半部分の展開は、ドラッグ・違法薬物のようなものこそないけれども、主人公の兄弟と葉山の海で出会った美女とが破滅へと突き進んでいくものであり、登場人物が兄弟、その友人たち、美女を含めて登場人物全員がいわゆる「中身は空っぽ」であり、観ていて可哀そうになるし、観終わると空虚で虚無な気分に包まれるのですが、それでも見応えがありました。


追記。最後まで観ると、主演の石原裕次郎よりも、津川雅彦のほうが印象に残りました。なんというか、難解なフランス映画を鑑賞し終えた後のような不思議な感覚になりました。