林家木久蔵『NHKCD 新落語名人選 林家木久蔵』「松竹梅」「林家彦六伝」「鮑のし」 | 落語探偵事務所

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 林家木久蔵『NHKCD 新落語名人選 林家木久蔵』ユニバーサルミュージック、2005年、を聴きました。
 「松竹梅」(1996年)、「林家彦六伝」(1986年)、「鮑のし」(1996年)の3席を収録しています。
 初代木久蔵師匠(現木久扇師匠)は1937年生まれなので、今は80歳手前ですが、このCDの高座の1986年は50歳手前、1996年は還暦手前で、このCDを聴くとかなり若々しく思います。
 「松竹梅」はNHKの「真打ち競演」という番組の音源で、栃木県の旧田沼町(現佐野市)での公開収録の高座です。マクラでは、東北新幹線の小山駅で降りて、車で1時間ちょっとで会場まで来たことを話しただけなのですが、それだけで地元の観客の心をぐっとつかんでいます。「松竹梅」をかけることを決めてのマクラなので、自身の結婚式の司会の仕事での出来事を面白おかしく話すのですが、これがとても面白いです。「これだけで1席」という感じでしょうか。本編は底抜けの明るさの溢れる「松竹梅」で楽しいです。さらに、会場の熱気がひじょうに高いのか、女性の笑い声が絶えず、CDを聴いていて、会場の笑い声につられて笑ってしまいました。
 「林家彦六伝」は10分ちょっとの短時間バージョンです。自分の師匠で昭和の大名人であった八代目林家正蔵・林家彦六師匠を戯画化・漫画化した漫談で、鉄板のネタです。この高座も面白いです。
 「鮑のし」はマクラで、大学病院のリュウマチの先生(医学部教授)による笑いの鎮痛効果についての研究に参加した話しが面白おかしく語られています。先生とのやり取り、先生のつけたオチが抜群に面白いです。本編の甚兵衛さんが弱々しくてちょっと哀しくもありますが、愉快です。
 そう言えば、「松竹梅」も「鮑のし」もおめでたい噺ですね。木久扇師匠のキャラに似合った噺をCDにカップリングしたのかもしれない、と思いました。