1966年11月12日。ウエストバージニア州レンデニンの墓地で、5人の男性が大きな鳥のような生物が飛ぶのを
目撃。ライトで照らしだされたその生物は、鳥ではなかった。
続いて、11月14日。ロジャーとリンダのスカーベリー夫妻、スティーブとメアリのマレット夫妻の2組の新婚カップルが、同州ポイント・プレザントのTNTエリアと呼ばれる旧弾薬庫付近ををドライブ中、廃墟の中から出てきた異様な生物に遭遇した。身長が2mほどのその生物は、3メートルもある巨大な翼を持ち、巨大な目が赤く光っていた。その生物は翼でバランスをとりながらヨロヨロと歩いていた。両夫妻は車を走らせその場を離れたが、その生物は翼を羽ばたかせる事もなく垂直に上昇し、車を追いかけて来て、時速160Kmで走っても振り切れなかった。
同日の夜、そこから100キロほど離れたポイント・プレザント北東のセーラムで、飼い犬が吠えていたため、主人が外を見ると、納屋の方に巨大な翼と赤く光る目を持った生物がいた。翌朝、飼い犬の姿は消えていた。
この夜を皮切りにポイント・プレザント周辺では、巨大な翼を持った赤い目の怪物が頻繁に目撃されるようになった。事態は郡の裁判所で記者会見が開かれるまでに発展し、怪物は「モスマン」と呼ばれるようになった。
モスマンを目撃した人の話を総合すると、体長は約2m。灰色の毛に覆われ、腕のかわりに大きな翼を持つ。その翼をはばたかせる事なく自動車よりも速く飛行する。頭部はなく、胸のあたりに目が赤く輝き、目と目の間隔が大きく開いている。 「キィキィ」という鳴き声を発する。
同じ時期、同じ地域ではUFOの目撃が相次いでおり、モスマンはUFOから放たれた「エイリアン・アニマル」ではないかとも言われている。実際に、UFOに吸い込まれるモスマンを目撃した住人もいるそうだ。
また、モスマンはTNTエリア周辺で多く目撃されたが、近在の民家ではポルターガイスト現象が頻発し、その為に引越しを余儀なくされる一家も出た。
また、モスマンに係わった者には死が訪れるとされる。いわゆる「モスマンの呪い」である。1967年12月15日、ポイント・プレザントとオハイオ州の間にかかるシルバーブリッジでモスマンが目撃された。同日、シルバーブリッジは大規模な崩落事故を起こし、46人もの犠牲者を出す大惨事となった。この日以来、モスマンの目撃は途絶えているが、モスマンを取材していた地元紙の女性記者・メアリー・イール(Mary Hyre)は1970年2月に変死。
2002年にリチャード・ギア主演で公開されたモスマンを題材にした映画『プロフェシー』に携ったジェシカ・カブランは、2003年6月に24歳の若さで事故死。叔父の操縦する小型機がビルに衝突すると言う悲惨な事故だった。『プロフェシー』関係者では、彼女を含めて8人もの関係者が「モスマンの呪い」のせいで命を落としていると言われている。
2013年1発目は、メジャーネタ・モスマンです。

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< あけおめ。 |
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160Kmで車を追いかけるわ(ターボばあさんか!!)、UFOに
吸い込まれるは、ポルターガイストは起こすは、呪うは、
一説によると血まで吸うらしい。
オカルト要素てんこ盛りの「一粒で2度も3度もオイシイ」、
器用な方です。と言うか、存在自体が意味不明。
私も、どの書庫に分類していいのか迷った挙句、とりあえず
UMAコーナーに放りこんだ次第です。
しかし、色々調べた結論から言うと、モスマンの正体はどうやらアメリカワシミミズク(グレイトホーンアウル)等
の猛禽類を誤認したのではないかと言う説に1票です。私は。
(↓)アメリカワシミミズク。

モスマンがうろちょろしていたTNTエリアは、第二次大戦中まで使われた弾薬貯蔵施設で、その広大な敷地は
現在では自然保護区に指定され、鳥類の楽園になっているとか。当然、鷲やフクロウ等も沢山生息しています。
モスマンの爛々と赤く光る目、と聞くとまるで自光しているように思えますが、真実はさにあらず。
最初に目撃したリンダさんは「車のライトを当てたら目が赤く光った」と、飼い犬が吼えた家の主人は「懐中
電灯を照らしたら目が光った」と証言しております。光を照らすと動物の目が赤く光るのは皆さんご存知の通り。
「キイキイ」と言う鳴き声、羽ばたかずに高速で滑空するなども、大型の猛禽類の特徴と良く合致します。
廃墟や納屋に現われるのも、フクロウの営巣場所として適しているからではないかと。
また、「モスマン」との呼び名は、新聞記者が「バットマン」に引っ掛けて名づけたとされており、その名が流行る
までは、地元住民はみな単に「バード」と呼んでおり、「ありゃ、ただの鳥だよ」と事も無げに言う人も多かった。
モスマン騒ぎの中、アサ・ヘンリー(Asa Henry )と言う人が、出現したモスマンに1発ぶっ放して撃ち取ったの
ですが、死骸を確認すると、それはやっぱりフクロウでした。
では、同時期に目撃されていたUFOはどうなのか。ホントにUFOがピコピコ飛び回っていたのなら、
エイリアンアニマル説にも少しはもっともらしさが加わります。エイリアンアニマル説によると、モスマンは
宇宙人のペットだと言う事になっているらしいですが、そうなるとUFOには鷹匠ならぬモス匠が乗っているのか?
しかしこのUFO、後の調査で、オハイオ州コロンバスから訓練の為度々飛来していた空軍のC-119輸送機
だった事が判明。
モスマン騒動を聞きつけた悪戯好きのパイロットの中には、わざと低空を飛びUFOのふりをして地元の人を
ビビらそうとしていた者もいたそうです。
(↓)C-119 フライングボックスカー輸送機。

では、「モスマンの呪い」はどうなんでしょう。
シルバーブリッジの崩落事故は、橋の基礎構造である吊り鉄板チェーンの老朽化による欠損が原因である事
が判明しており、「モスマンの呪い」の立ち入る余地はなさそうです。

(←)シルバーブリッジ。
しばしば「シルバーブリッジの崩落事故前にモスマンがいた!!」と写真が出てたりしますが、
(↓)これ。

これは、シルバーブリッジではなく、ケンタッキーブリッジと言う全く別の橋で、撮影されたのも日付が入って
いる通り2003年の事です。写っているのは何だかよく判りませんですが、ともかく崩落事故とは何の関係も
ないのは確かです。ついでに言うと、ケンタッキーブリッジが崩落したとの話も聞きませんので、橋にモスマン
が出たからと言って、必ずしも崩落する訳ではなさそうです。
メアリー・イールさんは4週間ほど入院した後の病死であり、特にヘンチョコリンな死に方をした訳ではなさそう
です。ジェシカ・カブランさんは確かに悲劇的な死を遂げましたが、ハリウッド映画の製作に関わる人の数から
したら、そのうち何人かが数年内に亡くなっていてもそうおかしくはない。「呪いで死んだ」人の中にはサントラ
に楽曲を提供しただけの人とか、ほんのちょい役で出ただけの人なども含まれており、「呪い」のせいにするのは
少々強引なようです。ツタンカーメンの呪いなんかでもそうですが、この手のハナシの弱い所は、何と言っても
「死んでない関係者の方が圧倒的に多い」事でしょう。
実は、『プロフェシー』関係者が呪いで次々に…と言うハナシの出どころは、UMAファンならご存知の方も多い
未知動物研究者のローレン・コールマンで、自分のモスマン本の宣伝がてらにそんな事を主張していた
とのオチもあったりして。
まあ、新年早々そんな事はツッコミはどうでもいいとして、やっぱりモスマンを語るにはジョン・A・キール
を抜きにする訳にはいかないでしょう。
キールはいわゆる超常現象研究家なのですが、モスマン事件を採り上げた『モスマンの黙示』の著者であり、
それは映画『プロフェシー』の原作にもなっています。
キールは超常現象に関して独自の世界観を持ち、詳しく書くと徹夜になるのではしょりますが、まあ色んな
オカルト現象をごった煮にして本を書き、読者に美味しく食べさせてくれる方です。
『モスマンの黙示』も大半はキールの創作くさいのですが、しかしこれがまたとても面白く読ませるのです。
だって、冒頭からして、「ある雨の夜、一軒の民家に黒尽くめの男が訪ねて来て電話を貸してほしいと言う。
いぶかしんだその家の夫婦はそれを断ったが、翌日近所の人々に怪しげな訪問者の事を触れ回った。
その数週間後、夫婦は橋の崩落事故に巻き込まれ…。近所の人々は、あの夜の訪問者は悪魔だったに
違いないと噂し合った。―しかし、その訪問者とは、車のトラブルに見舞われ、救援の電話をかけたかった
私自身である…。」みたいな、「そんなの嘘だぁ!!」とツッコミつつもグイグイ引き込まれるシロモノなのです。
他にもメアリー・イールのもとにMIBみたいなのがやって来たり、橋の事故やイールが亡くなった日付を
これこれこうして足し算掛け算するとほ~ら666の悪魔の数字になる、とか、そんなハナシのオンパレード。
懐疑派にも「胡散臭さ爆発だけど、面白いじゃん。」と、ある意味ファンになる人が大勢いたため、何となく
それがモスマン事件のメインストーリーみたいになっちゃったと。
それに、チェルノブイリや9.11の時もモスマンが現われた、とか色んな尾ひれがついて、元々良く判らなかった
モスマンが余計に訳が判らなくなっちゃった。
そんな感じなのかなぁと言う気がします。
ところで、このモスマンですが、日本人の感覚からするとUMAとか何とかと言うより、妖怪ですよね。
現われたのがちょっと前の日本だったら確実に妖怪として分類されていた事と思います。
鳥と人間のハイブリットを思わせる姿かたちは様々な動物を組み合わせたヌエを思わせるし、
祟る妖怪も日本には沢山おりますし。存在自体が意味不明だし。
「存在自体が意味不明」なのが妖怪の本分でもあり、最大の魅力でもあると思うのですが、アメリカには妖怪
とか祟るとか言う概念がない上に、何事にも意味を見出したがるので、「UMA」とか「エイリアンアニマル」とか
「呪い」と言う味気ない概念に置き換えられているのではないでしょうか。ああ、可哀想なモスマン。
掲載したモスマンのイラストも、目撃者自身が描いたのではなくローレン・コールマンの手によるものだとか。
これを水木しげる先生なんかが描いたら、もっともっと味のあるモスマンになったでしょうに…。
*かなり酔っ払って書いているので、内容の正確性は全く保証できかねます。悪しからずご了承下さい。