ここの所、本業ネタをずっと疎かにしておりました。
最近仕入れたネタです。
Jさんは私と同世代の男性です。
この間、酒を飲んでいて子供の頃の話で盛り上がったのですが、そんな中でJさんが話しを始めました。
「今でも忘れられない怖い体験をしたんですよ…」
Jさんが小学4年か5年頃の事です。
町外れに昔からある廃墟、やはりそこは「お化けが出る」といわれており、子供は滅多に近づかない場所だった
のですが、ある日そこに探検に行こうと誰かが言い出したそうです。
確か、転校生の子がお化け屋敷の話を聞き、興味深深になって、皆を誘った様な憶えがある。兎も角、クラスの
男子が5人ほど集まって、廃屋に乗り込みました。
その廃屋は古い日本建築で、結構なお屋敷でした。漆喰の塀に囲まれておりますが、門も朽ち果てて簡単に敷
地に入る事が出来ました。Jさんもそこに足を踏み入れるのは初めての事でしたが、日中で友達もいる事からあ
まり怖くはありませんでした。門から玄関まで2~30mほどもあり、背丈ほどの雑草を掻き分けながらようやく辿
り着くと、引き戸は風雨に破れておりました。屋敷の中はもうぼろぼろで、屋根はところどころ穴が空き、空が見
えるほど。床もところどころ抜け落ちて気をつけないと踏み抜いてしまいます。しかしそこは毎日森や川で遊んで
いたJさん達ですから、苦もなく屋敷内を歩き回りました。屋敷内は家具や調度品等が一切無く、ただのガランド
ウで、どの部屋に入っても同じ様な感じですので、やがてJさん達は飽きてきました。「全然怖くないやん」「つま
らんから帰ろか」と言いながら、幾つ目かの部屋に入ると、そこだけ部屋の中に物が置いてありました。腐りきっ
た畳の上に、3体の人形が立っていたのです…。市松人形と言うのか、古い日本人形です。大きさは高さ30セン
チ位でしょうか。廃墟の中の人形は、無表情でJさん達を見上げている様でした。不気味な光景にしばし立ち竦
むJさん達でしたが、良く見ると、そららの人形はは全く汚れてないのです。つい今まで女の子が人形遊びをして
いた様に。とても、何年も廃墟の中にあったものとは思えません。
「何でこんなとこにこんなのが…」
「ど、どこかの子が入ってきて遊んでるんじゃない?」
「そんな、こんなところで遊ぶ女の子はおらんやろ」
途端にゾーッと怖くなったJさん達。その内連れの一人が人形に手を伸ばそうとした時…
さわるな
と、悲鳴のような、甲高い女の子の声が廃墟に響きました。
Jさん達は肝を潰して逃げ出し、二度とあそこへは行くまいと心に誓ったそうです。
と、ここで話が終われば良かったのですが、そうは問屋が卸さない。
一緒に行った誰かが学校で話したらしく、クラスではその話で持ちきりになりました。
俺も行ってみると言い出す奴も多く、Jさんはいいからやめておけと忠告していましたが、やはり何人かがまたそ
の廃屋に乗り込んでいきました。次の日に話を聞くと、確かに人形はあったがそれは2体しかなかったと言い、女
の子の声は聞こえなかったと言います。Jさんはまた背筋を寒くしながらそんな話しを聞いておりましたが、その
夜、夢の中に人形が出てきました。「もう来るな もう来るな」と夢の中の人形は繰り返しつぶやいていました。
うなされたJさんが飛び起き、あまりの怖さに部屋の電気をつけると…
机の上に、夢に出てきた、あの廃墟にあった人形が立っていました。無表情な視線をJさんに向けながら。
Jさんは悲鳴をあげ、半べそを書きながら親を起こしに行きましたが、親を連れてきた時にはもう人形の姿はあり
ませんでした。
悪い夢でもみたんだろうと親には言われましたが、Jさんにはとてもそうは思えない。翌朝学校でその話をする
と、あの廃屋に入った者全員が、昨夜全く同じ体験をしていました。
後から聞いた話では、あの廃屋は戦後間もなく家族の者が次々と変死し、途絶えた家だったそうです。
廃屋はその後も長くそのまま放置されておりましたが、10年ほど前にようやく取り壊され、今では駐車場になって
いるそうです。
しかし、やはりそこでも幽霊の噂があるそうです。
何でも、人形を抱えた、和装の少女が出るとか出ないとか…。
