「ムァガァレ…ムァガァレ…」
 
 
―このフレーズにピンと来た方は、恐らく私と同世代でしょう。
 
日テレ系『木曜スペシャル』に出演し、日本に超能力ブームを巻き起こした「稀代のサイキック」…
 
ユリ・ゲラー
 
ユリ・ゲラーといえばスプーン。スプーンと言えば、スプーンおばさんかユリ・ゲラーと言う位の有名人です。
 
(ちなみに、冒頭の台詞は「曲がれ、曲がれ」と言っております。別にわざわざ日本語で言わなくてもいい様な気
 
もしますが…。)
 


 
何故今頃ユリ・ゲラーかと言うと、昨日ちょっとビックリした事がありまして。
 
うちの店の事務のおねえちゃん(22歳)が、「TOさん、ユリ・ゲラーって超能力の人、知ってます?あの人凄いで
 
すよね~」と寝ぼけた事を言い出したからです。
 
話を聞くと、去年○マスマに出たユリ・ゲラーを見て、ホントに超能力ってあるんだと思ったとか。
 
 
そうか、この世代って、ユリ・ゲラーを知らない人も多いんだ…と初めて気付いた次第です。
 
 
私もたまたまその放送を観ておりましたが、完全にネタバレしているユリ・ゲラーを、人気番組に引っ張り出すフ
 
ジテレビの度胸に感心したものです。
 


 
ユリ・ゲラーの超能力のトリックについては、90年代には既に暴かれ尽くしており、今更ここで採り上げるつも
 
りもありませんが、彼の「超能力」を一言で表現するなら「稚拙な手品」と言う言葉が一番ピッタリくる様です。
 
(実際、私の友人で、大学時代に奇術部に入り色々な施設の慰問などをやっていた男は「あんなもん、ど素人
 
で、見るに堪えん」と言ってました。)
 
 
例えば、彼の十八番である「スプーン曲げ」も、メタル・ベンディングと言うマジックの一分野で、ユリ・ゲラー以上
 
に巧に曲げてみせるマジシャンは世界中に大勢存在します。
 
 
そう言うと、事務のおねえちゃんは「でも、剛君の描いた絵を、そっくりそのまま透視したんですよ!!」と、口をとん
 
がらかせて反論します。
 


 
番組を見ていなかった方に、簡単に説明すると、それはこんな感じの「超能力」でした。
 
①剛君が楽屋で絵を描き、それを誰にも見せずに折りたたんで持っている。
 
②ユリ・ゲラーがその絵を透視し、画用紙にその絵を描く。
 
③両者を並べると、絵柄だけでなく大きさもピッタリ同じ!!見事に透視成功!!スタジオに驚きの声!!
 
 
―これ、ノーカーボン紙等を使ったトリックですね。恐らく。
 
ノーカーボン紙とは、筆圧で紙の裏面に塗られた染料入りのマイクロカプセルが潰れ、下の紙の表面に塗られた
 
顕色剤と反応して発色する紙です。これによって、上の紙に書いた文字や絵が、下の紙に複写されるのです。
 
普通のカーボン紙と違って、塗料で発色させるので、基本的にどんな色でも出す事が出来ます。
 
剛君が楽屋で絵を描くところは写されなかったのではっきりとは言えませんが、恐らく剛君は、1枚だけ切り離し
 
た紙に絵を描いたのではない筈です。束になった紙に絵を描き、その紙がノーカーボン紙だったのだと思いま
 
す。そのノーカーボン紙は、限りなく白に近い色が発色されるもので、剛君の書いた絵が複写された2枚目は、一
 
見何も書かれていない白い紙に見えたのだと思います。ユリ・ゲラーは、透視する振りをして、後は至近距離で
 
見ればうっすらと見える線をなぞっていけば、イッチョ上がりです。
 
「そっくりそのまま」 「大きさもピッタリ同じ」と言うのがミソで、これは元の絵を複写した証拠に他なりません。
 


 
この時、ユリ・ゲラーは「スプーン曲げ」はもちろん、他にも「壊れた時計を直す」 「手のひらで種を発芽させる」
 
など、お得意技を自慢げに披露しておりました。残念ながら、全てトリックが暴かれ済みのやつばっかり。
 
マッタク、厚顔無恥と言うか、幸せな性格と言うか…。さすがにSMAPのメンバーもやや苦笑いなリアクション
 
でした。
 


 
私的に結構驚いたのが、番組の中で、マイケル・ジャクソンとの親交を語っていた事。
 
未だにこんな事言いふらしてるのか、このオッサンは!? と少々腹が立ちました。
 
 
二人に交友関係があったのは事実ですが、それも2002年位までと言われております。その後疎遠になり(これは
 
海外の番組でユリ自身がそうコメントしている)、マイケルの死後に発見された「私の敵リスト」に、ユリ・ゲラーは
 
堂々とリストアップされているのです。
 
 
マイケルを紹介した謝礼として、マーティン・バシール(「マイケル・ジャクソン裁判」のきっかけとなった番組『マイ
 
ケル・ジャクソンの真実』を制作した人)から20万ドルとも言われる高額の紹介料をせしめた事などが、マイケル
 
のカンに触ったのでしょう。
 
 
ユリ・ゲラーにしては「死人に口なし」のつもりだったのでしょうが、余り日本の視聴者を舐めるな!!
 
―と言った感じです。
 


 
あんまり舐められっぱなしも悔しいので、ここで一つカマしてみましょう。
 
ユリ・ゲラーさんの、『10の恥ずかしい過去』大特集!!
 
これを読んだら、金輪際ユリ・ゲラーの事を「稀代のサイキック」などと思えなくなる事請け合いです。
 
 
①イスラエルにいる頃(念の為ですが、彼はイスラエル人です)、友人と共に奇術の研究を始めたユリは、ナイトクラブと契約して「超能力ショー(テレパシーもどき)」を始めるが、あまり下手糞だったので支配人から契約違反で訴えられ、「今後、イスラエル国内で超能力を冠したショーを行ってはならない」との処分を下されている。
 
②その頃、ハクつけなのか見栄っ張りなのか、ソフィア・ローレンと並んで写った合成写真を公表し、世間から袋叩きに遭った。
 
③アメリカに渡ったユリは、スタンフォード研究所で初歩的な超能力テストを受けたが、本格的なテストが始まる前に勝手に帰ってしまった
 
④超能力者としてテレビ出演などをするようになるが、大御所奇術師(ジェームス・ランディー)が一緒に出演すると、何故か超能力を発揮する事がなかった
 
⑤自分を批判していた懐疑的団体(サイコップ)を訴えるが、「軽々しく告発するな」と、逆に賠償金(12万ドル)を支払う羽目になる
 
⑥ポケモンに出てくる「ユンゲラー」は自分のイメージを盗用したものだ!!と任天堂に6000万ポンド(約101億円!!ふっかけますなぁ)の賠償を請求する裁判を起こしたが、任天堂の弁護士に「ユンゲラーは超能力でスプーンを曲げる事が出来ますが、似ていると言うなら今ここで超能力でスプーンを曲げてもらえませんか?」と切り返され、訴えをあっさりと取り下げた
 
⑦Mr.マリックが大ブームだった頃に来日したユリは、マリック氏を呼び出して「スプーン曲げはユリ・ゲラーが元祖だ」と一筆書かせた。(せこい・・・)
 
しかも、その時、マリック氏が箱の中を透視する超魔術を見せてあげたところ、「どこでタネを売ってるんだ?俺もやる!!」とか何とか言って、帰ろうとするマリック氏をエレベーターまで追いかけて執拗に頼み込み、タネを教えて貰った。その後、ユリの超能力レパートリーに「箱の中を透視」が加わった。
(マリック氏はユリの事を「超能力者と言うより、ビジネスマン(≒金儲け主義)」と評している。)
 
⑧ユリは、「自分が豪邸に住んでいられるのは、超能力で透視して油田を掘り当てたから」と言っているが、実際は油田に透視ならぬ投資をして収益をあげたのである。(やはり、ビジネスマンとしては有能の様です。)
 
⑨ユリは「2002年ワールドカップの時、ベッカムの足の負傷を、私が超能力で直した」と言うが、実際はTV出演した時にベッカムの足の写真をかざして、視聴者に「パワーを送って下さい」とか何とか言っただけ。後日ベッカムが、「足が治ったのはユリ・ゲラーのおかげ」とコメントしたそうだが、その事実は確認できない
(言ったとしても、ジョークでしょう。)
 
⑩「2004年の欧州選手権でベッカムがPKを外したのはユリ・ゲラーのせいだ」と言われるが、これは、「イングランドが勝つために念を送ったが、それが強すぎてベッカムのシュートを大きく曲げてしまった」と、ユリが勝手に新聞に告白しただけ。しかもその新聞とは、『The SUN』である。
 
 
―などなど、挙げていけばキリがない…と言うか、ユリ・ゲラーの半生はウソと金と恥で成り立っている様な感じ
 
になってしまうので、この辺でやめときます。
 
 
一応、ユリの弁護をしておくと、イスラエルでは行き場の無かったユリをアメリカに連れて行って「稀代のサイキッ
 
ク」に仕立て上げた黒幕(アンドレア・プハリッチ=アメリカ・オカルト界の有名人)がいるので、一概にユリ・ゲラー
 
だけがアレだとは言えないのです。
 


 
しかし、スマスマ出演から1年。
 
ユリ・ゲラー再ブームにはなってない様です。
 
ユリさんも、日本でもうひと稼ぎと言う目論見が外れて残念でした…。
 
 
もう一度、聞きたいです。
 
「ムァガァレ…ムァガァレ…」
 


 
 
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