北海道S市での出来事です。 
車で大きな自損事故を起こし、暫く入院して戻って来た同僚の、快気祝いの飲み会の席で聞いた話です。私たちが、事故の原因を聞くと、信じてくれるかどうかと言いながら、彼は喋り始めました。
 事故当日の夜半、遠方からS市に戻る途中。S市郊外の工業団地の造成地を走っていたそうです。疲れてぼーっとしながら車を走らせていると、ふと、路側をジョギングしている男が目に留まりました。
オレンジ色の街灯に照らされながら走る男を、「こんな時間に、こんな所を…。」とぼんやり眺めていましたが、すぐ異常に気付きました。
 先程から、その男との位置関係が変わってないのです。メーターを見ると、時速60キロ超。ぎょっとした彼は、アクセルを踏み込み速度を上げましたが、それでも左斜め前を、その男は走っている。慌てた彼は、思わず急停止。
 恐る恐る前を見ると、その男は相変わらずの位置に、背中を向けたまま立ち止まっていたそうです。固まったまま男を凝視していると、男は、すーっとこちらに向き直ったと。
その顔には、まったく表情が無く、じーっと彼を見つめてきたそうです。
 パニックに陥った彼は、夢中でハンドルを切りUターンすると、元来た方へ全開で逃げ出しました。
必死に前を見て走っていましたが、どうしても後ろが気になる。見るとあの男が追いかけて来ていそうで、見ないように、見ないようにとしていました。しかし、背後から人の笑い声の様なものが聞こえ、つられてチラリと、ルームミラーを覗いてしまった。
 すると、そこには、ゲラゲラ笑いながら車の直後を走る、あの男の姿が在ったそうです。
 それからの記憶は、彼には無いとの事です。気が付いたら救急車で運ばれていたと…。

これは、本人から聞いた時は、頭打って少し…と心配になった話です。でも、本人が余りに真剣に話す姿には、十分な説得力がありました。因みに事故現場周辺は、特段心霊スポットでも何でも無い所です。昼間に行くと、全然工場の誘致が進まんでおらず、市の財政が心配になる場所でした。