第1話~20話 まとめ
宇佐美道彦や石川さゆりのあずかり知らぬ場所で、今まさにその会議は行われていた。
霊安室のすぐ下の階に設置された30畳はあろうかという大きな会議室で、この国の医師会、政界、経済界のトップに名を連ねる代表者たちが極秘で話し合いを進めていた。
そして今回の会議の議題提供、及びに司会役として『偽薬師』が何たるかを熱弁しているのが、当院理事長の島崎宗則だった。
「島崎さん、あんたの話にはいつも尾ひれがついてくる。私たちはいつもあんたの口車に乗せられて補正予算を編成するはめになる。あんただって年間の赤字公債の額を知らんわけでもないだろう?」
「しかし、『偽薬師』は異例の案件なのですよ!あなた方の常識だけで『偽薬師』を問い質されては困るのです。彼は、わが国はおろか世界レベルで人の命を救える資格を持った人間なのです」
「では聞くが島崎さん、あんた方医師には、人の命を救う資格がないというのかね?それならば医療にかかる国家予算を削減して『ギヤクシ』とやらに回してやったらどうだ?」
詭弁だ。彼らが年老いて辿り着くのは私たち医師の元だというのに。けれど私がいつも彼らと‘話し合う’時は、国家予算にケンカを売る時だ。
「『偽薬師』は国家的財産となり得る人材なのです―――」
かつて島崎宗則は、宇佐見道彦の父である宇佐見和彦と同じ研究をしていた。
「俺の愚息を頼んだぜ」
和彦の晩年の頼みを、そろそろ聞いてやる時が来たか。
やれやれ、宇佐見よ。何が愚息だ。
お前さんの息子が国家予算を動かす日が来るとは思わなかったよ。もちろんお前との約束は守るさ。それに『偽薬師』の秘密をここにいるお偉いさん方に話したら最後、投資の話も消えてなくなるだろうからな。
なに、息子の心配はいらないさ。まだ頼りないところはあっても、あいつはお前に似て病人にはやたらとお節介な性分だからな。
第23話へ つづく。