2006年7月15日
24回目の誕生日を迎える彼女がいます。
もし、その時を一緒にすごしているのなら…
ある決心とともに
50以上綴られるであろうこの話を
私は彼女に贈ります。
12月17日 「別れ」の二文字
まだ、今日になって間もない今、入れた小銭が詰まって出ないのをいいことに、自動販売機に八つ当たり、蹴飛ばしている。
昨日と言ったらいいのか。三時間ほど前の午後九時、携帯を見ると不在着信があった。亜弥から。
亜弥は、七時半に電話をかけてきたようだ。
仕事で俺が出られないことを知ってるやろ…なのに、どうして?
電話をかけ直すが、亜弥は出なかった。
もしかして、こっちに向かってるのか?
運転中だから出れないんやろ?
それとも、別れを告げるのが怖くなったから電話にでない?
いや、別れを告げるために、こっちに来てるんか?
別れ…そんなわけないよな、そんなわけない。
そう自分に言い聞かせ、気分を紛らわそうとレンタルビデオショップに向かった。
『天使のくれた時間』
~もし、あのとき別の人生を選んでいたら…~
20分ほど迷い、なんとなく、この映画を手にとり、車にもどった。
もどってはじめて、携帯を車に忘れ、店をうろついていたことに気づく。
21:43 亜弥 不在 28秒
何やってんねやろ、俺。
メールも入っていた。
「明日、電話するね。」
頭の中で「別れ」の二文字がちらつく。
寝ようとしても、寝付けない。
動かず、じっとしてるのは自分らしくないからか、蛇の生殺し、早くトドメを刺してほしいから車に乗り込もうとしているのか。
両方だな。
百円玉と五十円玉を入れても、コーヒー一缶すら売ってくれない自動販売機を、もう一度軽く蹴飛ばし、駐車場に向かった。
12月16日 心がこわれそう…
考えるのが嫌なときって、寝る。
夢に逃げる感じでね。
昨日、早く寝たから、また亜弥のメールを読んだのが朝。
「昨日からずっと賢一のことばかり考えているよ。
なんか、心がこわれそうだよ。
苦しい思いさせてごめんね。
おやすみ。
もう少し考えてみるよ。」
苦しい思いをしてるのは、亜弥のほうでしょ?
亜弥は、十分やさしいよ。
やさしいから、俺のことばっかり考えて、壊れそうになってるんじゃないの?
12月15日 家具作り
約束した9時に、30分遅れて工房に着いた。
「じゃあ、ワゴン作りましょう!彼女喜びますよ!!」
奥さんの元気な声に、苦笑いを浮かべるのがやっと。
昨日のタイムリーな話しを、するべきかしないべきか…そんなことを迷っている自分に、またもう一度、苦笑した。
朝、亜弥が深夜、俺に送ったメールを読んだ。
「賢一は、私が一番頼れる相手だよ。一番の支え。
でも、それって好きとか恋とかと同じなのか分からなくなってきた。
好きってもっと、相手に優しくしたいって気持ちだと思う。
明日になったらまた、少し冷静になれるかな。
賢一は悪くないよ。
おやすみ。」
今日は、もう明日。
昨日は、冷静じゃなかったのかい?
今、どんな気持ちで、亜弥は職場にいるんだろう?
まいったね…俺が悪くないなら、何もできないやん。
「このドリルで、穴をあけて、板に貫通しないようにね!こんな感じ」
「なんで、貫通したらダメか教えなきゃ駄目だ。」
「そんなの、やっているうちに分かるわよ!」
「なんで、貫通させないのかというと…」
奥さんを無視して、主人が紙に図を書きながら説明をしてくれた。
それに相づちをうちながら、この二人も今の自分と同じようなものを乗り越え、一緒になったのかな…とボーっと考えていた。
「わかりました?」
「あ、、ハイ!」
メールには返信しないよ。距離を置くんだからね。
それに、優しくしたくなるように、意地悪もしないと。
やさしくしたいって気持ちが好きってこと…か。
なるほどね。
12月14日 距離
「あのさ…」
いつも通り俺が話していると、急に亜弥が、そう、つぶやき、妙な沈黙が流れた。
「何?」
聞きたくない言葉が返ってくることを知っている。
いつだったか、前と同じなんだよ…この空気が。
「あのね……少し…距離をおきたい」
「わかった」と言うなり、あのとき俺が電話を切ったのは、
クリスマスに約束した神戸行きのチケット、今日取ってきたのに…って言いそうだったから、
手作りの机をプレゼントしようと思っていたのに…って言いそうだったから、
今日、俺落ち込んでいるのに、なんでこんなときに…って言いそうだったから。
あと、意地悪かな。
まいったな…机作る約束、どうしよう。
12月13日
こっそり、クリスマスプレゼントについて考えてたんだ。
お金があまりないから、手作りにしようかな…っと。
友達に、家具屋さんがいてね。
今日、手伝ってくれるか頼んでみた。
奥さん、すごい勢いでひやかすし…。
「彼女に手作りの家具??いいなぁ!
私だってクリスマスプレゼントほしい。
彼女きっと喜びますよ☆もう、ほんとに…」
じゃ、じゃあ、明後日の木曜日…いいですか?
「わかりました。素敵なものを作ってくださいね。」
こんなに照れたのは、久しぶりだ。
今回のプレゼントは、絶対にバラさない。
いつも失敗してるからね。
ついつい、喜ぶ顔が早く見たくなって、自分でバラしてしまう。
うまく作れるといいけど…
りんご、半分
亜弥には秘密。
だって、りんご、むいてくれなくなるでしょ?
むけるようになったのはいい。けど、やっぱり半分しか食べられないみたいや。
残った半分のりんご。
色が変わりはじめてる。
あーあ。
二人なら、ちょうどいいのにね。
11月19日深夜
コンコン… カチャ
亜弥が来た。
しんどかったろうに。
「やっぱり、見たいじゃん。
この部屋の最後の輝き、ふふッ。」
ありがとう。
「もう、引っ越しの準備で散らかっちゃうもんね。
それに、、あれでしょ?」
ん?
「私のために片づけてくれたんでしょ?
引っ越しの準備もおいておいて。」
来てくれて、ありがと。
どうして、こんなにやさしい…
自分が、、はずかしいよ。
11月19日夜
「えっ…」
三年前、はじめてこの部屋に来たとき、亜弥はとても驚いた。
俺のキャラと、整った部屋のギャップが激しかったらしい。
その日だけ、背伸びしてたんだよ。
「今ならわかるさぁ。このちらかった部屋みりゃぁ…」
う~る~さい!
亜弥が失恋し、俺が話しを聞いているうち、いつのまにかこの子に恋していた。
この部屋が、はじまりだった気がする。
「いやぁ、私は、あの部屋の綺麗さに落とされたと思うよ。」
亜弥はよく、そう、うそぶく。
そんな思い出の部屋から、今月いっぱいで引っ越す。
亜弥がこの部屋にこれるのは、あと数えられるくらいしかない。
明日から少しずつ、引っ越しの準備をする。
背伸びした部屋を見せられるのは、今日しかなかった。
家具の配置は、あのときとはだいぶ違うけど、思い出すかな?
お香も、久しぶりにたいてみよう。
亜弥は親友の家に行っている。…少し遅い。
「今から行きま~す」
ふ~。っと安心したのもつかのま、
もう一度、亜弥から携帯に電話がかかってきた。
「高速、事故で通行止めみたい…、降りなきゃいけない…。しかも、すごい渋滞で降りれない。」
時間も遅い。
渋滞したインターを降り、下道でここまで来るには、少なくとも5時間はかかる。
無理かな…、そう思った。
しょうがない、亜弥、自分の家に帰りな。
「そうだ、、ね。もう眠くなっちゃってるのに、、無理だよ、、ね…」
約束したのに…
こんなに遅くなるんやったら、どっちにしろ無理やったんちゃうん…
そう思った。
しょうがないのに。
あの時みたいに、
もう、この部屋が綺麗なところ、見れないね…亜弥。
11月18日 朝
あまりに大きくて、半分残ってしまった。
「これ、持ってかえって、お昼にでも食べなよ」
え、亜弥にあげようと思ってたんやけど
「えぇ、こんなに美味しいのに悪いよ…」
あ、そう?じゃあ、持って帰るわ
「エェェエェ!さっきあげるって言ったじゃん!」
えぇ…悪いって…
「そ、それは、遠慮しても賢一ならくれると思って!もぅ!」
混乱の中、少しかわいいと思ってしまう。
「アアァ!今日もカニ座低ランク…」
いい日になりそうだ。


