フランツ・ブリュッヘンも鬼籍に入っちゃったんですね。つい先日偶然知りました。彼のコンサートもこれまたずいぶん以前に行ったことがあります。あれは京都でしたか。バッハのミサ曲ロ短調だったと思います。
 古楽器独特の音色が頭の中で万華鏡のようにぐるぐる回り出すような強烈な体験でした。ブリュッヘンはヤク中だったとの特に根拠のない噂を聞いたことがありますが、真偽はともかく兎に角イっちゃった人であることには変わりないと私は思ってました。偉大な芸術家というのはどこか針が振りきれたところがあるのでしょう。
 私が実際に出かけたクラシックのコンサートで、頭のなかで音がぐるぐる回り出すような経験をしたのは、このブリュッヘンのミサ曲とこれまた昔秋吉台で聞いたノーノのプロメテオの2回だけです。ノーノの場合、実際コンピュータで天井のスピーカから出る音を回転させていたので、音がぐるぐる回って聞こえたのも当然と言えば当然なのですが。その点アナログであんな効果を出したブリュッヘンは本当にすごかったと言えそうです。
 古楽の演奏スタイルというのは、今現在当たり前になっている演奏スタイル(慣習)を一旦白紙に戻して考え直そう、という発想から出てきているもので、その点においては所謂現代音楽と出発点を共有するものとも言えるのではないでしょうか。実際リコーダー奏者としてのブリュッヘンは現代音楽の作品も演奏していたようです。バッハの音楽を使ってある意味所謂現代音楽以上にアブナイことをやっちゃったとも言えそうです。ブリュッヘンという人は。稀有の才能でした。合掌。
 彼のミサ曲を貼っておきます。取り敢えず冒頭の部分だけでも聞いて見て下さい。この怪しげな雰囲気に引きつけられた人はもう彼の魔力から逃れられません。
 https://www.youtube.com/watch?v=ql1W2v7U9Ho