我が家の寝室には枕が転がっている。
小さな小さな枕だ。
あの子の、ぬいぐるみの為に作った枕だ。
シンプルなのは可愛そうだから、レースをつけてあげよう!と、私はレースをつけてあげた。
昨日のことのように思い出す。
だけど、それは昨日ではない。
遠い昔の話だ。
あの子は初めはぬいぐるみに枕をしてあげていたけど、いつしか枕をしなくなり、このカーテン横にずっと転がっている。
それからあの子はいなくなり、あの子と一緒にぬいぐるみも、一緒にいなくなった。
それでも枕だけはずっと同じ場所にある。
枕の持ち主であるぬいぐるみもいないのに。
更にそのぬいぐるみの持ち主であるあの子もいないのに。
ずっとずっと、枕だけが同じ場所にあるんだ。
私は、それを、動かすことができずにいる。