20代の頃。

私は薬の配達の仕事をしていた。

足が悪くて外に出られない、高齢のおばあちゃんやおじいちゃんの家まで薬を届ける仕事。



元々共働きの両親に育てられた私は、学校帰りにいつもおばあちゃんが面倒見てくれてたから、大のおばあちゃん子。



だから、色んなお宅のおばあちゃんやおじいちゃんと、仲良くなるのは大得意。

薬を配達するついでに色んなお喋りをして、すぐに仲良くなった。



その中で、最近強烈に思い出すおばあちゃんがいる。

そのおばあちゃんはその時で、80代半ばくらい。

いつもニコニコ笑ってお喋りしてくれてた。



だけどある日。

いつもと違う縁側でお喋りをしたあの日。


おばあちゃんは涙を流して、私に教えてくれた。

「私はね、子供を亡くしているんだよ。

まだ三歳くらいの可愛い盛りでね、いつもこの縁側で遊んでたことを今でもハッキリ思い出すんだよ。」



まだ、結婚もしていない、子供を育てたことも無い20代の私。 

何て言ったらいいのか分からなかった。


ただ、「大丈夫だよ。」って言ったのは覚えてる。



何が大丈夫なのか、分からない。

大丈夫な訳無い。



ごめんね、おばあちゃん。

あの時はそんなことしか言えなくて。

今なら、沢山沢山話したいことがあるよ。

私も聞いて欲しいことがあるよ。


あれから20年。

もう天国で子供さんと逢えたかなあ。



私もおばあちゃんみたいに、何歳になってもあの子のことを想って涙するのかなあ。