清朝最後の皇后・隆裕の哀しみ ー秋扇にて流蛍を撲つー | to-be-physically-activeのブログ

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   秋  夕

銀 燭 秋 光 冷 画 屏 

軽 羅 小 扇 撲 流 蛍

天 階 夜 色 涼 如 水

坐 看 牽 牛 織 女 星

 

銀燭の秋光に  画屏冷え 

軽羅の小扇に  流蛍を撲つ 

天階の夜色  涼しきこと水の如し 

座して看る  牽牛織女の星 

 

 唐の詩人杜牧(803-852頃)の『秋夕』という漢詩である。宮中で暮らす女官の孤独を詠った秋の詩である。雪組公演『蒼穹の昴』で野々花ひまりさんが演じている隆裕皇后の心情にぴったりだなと思う。内容としては,蛍が飛んだり天の河を詠んだりしているので夏に詠まれた詩のような風情がある。

 第一句は,秋の夜の光景を詠んでいる。ロウソクの冷めた光がゆらゆらと屏風の絵を照らす寂しい雰囲気を描いている。

 第二句は,絹を織り込んだ小さな扇で,無聊にまかせて飛んでくる蛍を次々とはたき落とす様子を描いている。「秋扇」は,夫に捨てられた女性または寵愛を失った女性の比喩として使われる言葉だそうだ。

 第三句は,夜が更けて寒々とした宮殿の階(きざはし)に座り,相手の男性の冷淡さを「水の如く涼やか」と嘆く様子を描写している。

 第四句は,夜空にかかる天の河を眺めながら,離れ離れになった牽牛と織女がいつか巡り会ってふたたび愛を取り戻す日がくることを願う一途な女性の思いを表現している。

 

 隆裕皇后は,夫である光緒帝の正妃でありながら夫婦らしい愛情にも恵まれずに不幸な結婚生活を送った女性である。光緒帝亡き後は,皇太后として清朝のみならず中国の歴史上「最後の皇太后」としてふるまい,辛亥革命の年(1912年)に『清室退位詔書』を頒布することで清朝の世を終わらせる役割を演じた。その翌年に45歳で歿している。

 

頤和園の長廊に描かれた牽牛と織女の彩色絵