星組のレビュー・エスパーニャ『Gran Cantante(グラン カンタンテ)!!』(作・演出/藤井大介)は,季節ごとにスペインの各都市で繰り広げられるお祭りを主題に,情熱的な歌とダンスで彩られた素晴らしいプログラムでした。どちらかというと歌よりも群舞に魅了されました。スペイン舞踊に独特なフラメンコの衣装や髪飾り,チャコットパウダーを使って褐色の肌色を強調したお化粧や鼻筋を際立たせるメイクなど,普段の白塗りとは違う星組の組子の凛々しい表情を楽しめました。ロマの伝統やイスラム世界との交流が盛んだった欧州の辺境の地スペインならではの伝統が舞踊に反映されているのでしょう。
人はなぜダンスを見て感動し,心を糺すきっかけになるのか。久しぶりに映画『フラガール』(李相日監督,制作・配給/シネカノン,2006年)をビデオ録画でみました。石炭産業の衰退とともに廃坑と炭坑夫の解雇に揺れる常磐炭鉱を舞台に,起死回生の町おこし事業の目玉として常磐ハワイアンセンターの立ち上げに奔走する人たちのドラマです。
映画としては,借金を抱えて東京のSKDから田舎にダンス教師として流れてきた平山まどかを演じる松雪泰子さんが主役ですが,このドラマの見処はなんといっても素人娘からステージダンサーを目指す元炭坑夫の娘たちの涙ぐましい奮闘でしょう。特に助演の蒼井優さん演じる谷川紀美子がハワイアンダンサーとして成長していく姿は感動的です。ハワイアンセンターの開業が危ぶまれる様々な混乱の中で,フラの踊り子のリーダーとして主役を託された谷川紀美子が真冬の練習場でソロパートであるタヒチアンダンス“タネイムア”のリハーサルに没頭する場面は何度見ても迫力があります。
彼女が踊った「タネイムア・フラガール~虹を~」は,現在もスパリゾートハワイアンズの舞台を代表する演目になっています。ジェイク・シマブクロさんのオリジナル・サウンドトラックの美しく叙情的なハワイアンミュージックのサウンドとともに,夏休みの時期になると映画『フラガール』を繰り返し視たくなります。