マドンナ、トム・クルーズ、デミ・ムーアなど数々のセレブリティが“マクロビ”を健康や体型維持に取り入れていることから“マクロビ”は健康的な食事法として市民権を得ています。マクロビについてよく知らなくても「健康に気をつけている意識の高い人が実践している」というイメージをもっている人も多いのではないでしょうか。一方で、「カラダに良くない」、「宗教的」といったネガティブな意見もよく聞きます。一体どちらが真実なのでしょう?

マクロビとは

マクロビは「マクロ・ビオティック」の略です。語源は、ギリシャ語で「大きい、素晴らしい」と言う意味の”macro”と「生活」という意味の”bios”が組み合わさったものだとニューヨーク・タイムズには紹介されています。

マクロビの悲しい歴史

VOCE

1960年代の間は「ブラウンライス(玄米)・ダイエット」として日本のヒッピーの間で流行し、それがアメリカに伝わりました。しかし、1971年にアメリカ医学会が「マクロビは公衆衛生上、大きな健康問題だ」と弾糾したことから、マクロビは個人の健康を害するだけではなく、その人の人生そのものにとっても悪だというレッテルを貼られてしまいました。それにならうように、その後多くの栄養士から危険なダイエットとみなされてきました。

マクロビと菜食主義の違い

マクロビと菜食主義は似て非なるもの。菜食主義とは以下のような人たちのことを指します。

ベジタリアン:肉を食べない人たちの総称で卵や牛乳などの乳製品は食べます。
ビーガン:ベジタリアンの中でも乳製品を含む動物性食品は一切食べません。


一方、マクロビは東洋医学の「陰陽」の考え方が元になった食事法です。基本的に、玄米などの全粒穀物とたくさんの野菜を主に食べ、塩・醤油・植物性オイル・果物は時々食べ、陰性の食べ物(酒、肉など)を控える食事法です。
細かい方法や主張はマクロビを唱える人たちの間でも統一されていませんが、動物性食品を控える点からはビーガンに似ているとも言えます。

マクロビは健康にいい!

VOCE

マクロビを行なっている人は、カラダに悪いとされる飽和脂肪酸やコレステロールの摂取が少なく、一方でビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質、葉酸やカリウム、マグネシウムなどのミネラル、食物繊維など健康を維持するのに必要な栄養素をたくさん摂取する傾向があり、非常に健康的です。結果的に血中脂質や血圧が健康的に保たれ病気のリスクを下げることができます。

また、アメリカではマクロビは「〇〇だけを食べる」という“食事法”ではなく「バランスを追求」する“考え方/原則”として浸透しています。つまり、人生における食事の重要性と、健康と幸せを最大化するための食べ物のバランスを強調するものです。実際の健康効果と「バランス」を重視する考え方がセレブリティをはじめとする多くの人に受け入れられているのではないでしょうか。

お気づきかもしれませんが、このような食事術は健康的な食事法である「和食」だったり「地中海式食事」に自然と含まれる原理原則です。マクロビがカラダに良い結果をもたらすのは、マクロビの方法論・考え方が、古くからの健康的な食事法のエッセンスとマッチしていたのですね。

ただし、「マクロビがいい!」と盲信するのは危険なんです! マクロビにも落とし穴があります。

医学的に危険なナンバーセブン

VOCE

マクロビには「ナンバーセブン(No.7)」呼ばれる食事形態が存在します。その食事法は玄米だけを主に食べ、その他少量の野菜と水を飲むことができるというもの。

「10日で5kg体重が減る」など確かに体重減少効果を認めますが、その実態は“栄養失調”なのです。糖質を中心とした食事のみだと、タンパク質だけでなくカロリー、ミネラルが不足します。肝臓で新しくタンパク質が作ることができなくなり、カラダの脂肪分も減りますが、筋肉が猛スピードで分解されて病的にやせ細ってしまいます。実はこれ、「キャッサバ」などの芋類だけを食べ、タンパク質が不足しがちな発展途上国の人たちに起こっている栄養障害と同じなのです。「マクロビ(No.7)で痩せた」と思っている人は「クワシオルコル※」という名の栄養失調でやせ細ってしまったと認識を改めるべきです。医学的な「バランス」を考えると、No.7はオススメできません。
※クワシオルコル:低蛋白栄養失調症。蛋白質不足により血液中の液体成分がお腹に貯まり腹部膨張、足の浮腫、皮膚炎などをきたす。

以上、マクロビの健康効果と落とし穴について解説しました。マクロビは「バランス」を追求したもので、その食事術や考え方は間違いなく健康にいいものだと言えます。ただし、No.7のように医学的・栄養学的なバランスから逸脱すると健康を害するものだと頭に入れておきましょう。マクロビに固執しなくとも普段の食事で「バランス」を改めて認識することが重要ですね。




引用元:カラダに良い? 悪い?「マクロビ」の正体