森の町に、ひろくんと、おばあちゃんが住んでいました。


さいきんのおばあちゃんは、

よくものをわすれたり、

同じことをくりかえして言ったりします。


ひろくんは思いました。

「なんでそんなこともわからないの?」


ある日、おばあちゃんがごはんを入れようとして、

おちゃわんをさかさまにしてしまいました。


ひろくんは大きな声で言いました。

「おばあちゃん、ばかみたい!」


おばあちゃんは、にこっと笑ったまま、

何も言いませんでした。

でも、その目はすこしさみしそう。


その夜、お父さんがそっと言いました。

「ひろ、君も小さかったころ、

スプーンをうまくもてなかったろう?

その時、だれが何度も教えてくれた?」


ひろくんは思い出しました。

――それは、おばあちゃん。


「ひろはじょうず! がんばれ!」

にっこり笑って、ほめてくれたのはおばあちゃん。


胸がぎゅっとなって、

ひろくんは次の日、そっとおばあちゃんの手をにぎりました。


「おばあちゃん、いっしょにごはん食べよ。

ぼく、手つだうから」


おばあちゃんは、またにっこり。

その笑顔は、むかしとおんなじ。


――ひろくんは知りました。

たとえおぼえていなくても、

おばあちゃんは、ずっと大切な人。


そして、手をとりあってくらす日々の中に、

苦労もあるけれど、

あたたかい喜びがたくさんあることを。