トラウマなどで圧倒されるような状況、音やイメージや匂いや触覚などの体験を、記憶の遮断として封印している時、突如襲ってくるシーンや感覚が、過去のことなのに、まるで今起こっているかのように感じることがあります。
それは扁桃体に送られた「いやな感じ」という情報は、普段は意識に上ることはありません。
しかしあるとき、ふと蘇ると、それが視床下部に送られ、その状態に反応して身体全体に緊急信号を送る。
これがフラッシュバックの状態です。
こうした状態のとき、前頭葉はうまく働くことができず、脳の奥のほうでは湧き起った感覚に圧倒され「いまは危険ではないよ」というメッセージを送ることができないのです。
このようにいろいろと脳のことを書き綴りましたが、脳に関しては結構解明されてきています。
解釈は誰だってできるのですが、じゃどうしたらいいの?と疑問がわき起こります。
トラウマによるPTSDの症状には、感情鈍磨、悪夢、不眠や過度の緊張状態、フラッシュバック、解離…といろいろあります。
こうした慢性状態も、海馬、扁桃体、視床下部、新皮質などが生き続けるために必死に試みを続けた証しなのでしょう。
こうした状態からの回復には3つのステージがあるといわれています。
①なんだかよくわからないけど調子が悪い時期があり、無意識のうちに何かの情景や音や匂いなどの刺激でいきなり過去の体験がフラッシュバックし、パニックに陥ります。
②断片的な記憶や湧き起る感情に圧倒される時期で、自分がトラウマを抱えた自分なんだと確認し、自分のトラウマに徐々に向き合い、体験を言葉にする。繰り返し語るうちに自分なりのストーリを組み立てられ、つらい記憶のファイルに新しい意味を与えます。「あんな状況の中で、自分はよく生き延びた」と。
③新皮質に、過去のものと納得させる時期に移行していきます。
脳がもう安全だと感じられるようにすることが大切です。
アメリカの報告では、トラウマによる慢性反応を起こしていた人が過去の体験を言葉で語っていくうちに、前頭葉の血流が良くなったという報告があります。
体験を言葉にするというのは、新皮質のコントロールを取り戻す作業になるのです。
そして記憶がばらばらの断片ではなくストーリとして意味付けされ、整理されたことで、
「これは過去の出来事であって今のことではない」という自分で扱えるサイズになっていくのです。
そのためには環境の調整も必要ですし、生活の改善も必要です。
それ以上に自分を変える勇気を持つことが大事です。
いくら周りのサポートが充実していても、自分自身を変えようとする準備が必要になります。
現段階での脳の科学では、簡単に記憶を書き換えることは出来ません。
変えてもらうというよりは、自分自身変える準備が必要になるのです。
きっとその勇気を持つことが出来たのなら7割がたは回復に向かいます。
頑張らないで、あきらめないことが大事なのかもしれませんね。