泡の時代 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー泡の時代ー



今の時代を小さな泡に喩えるなら
わたしの知っている
あの時は
一体どんな
狂気の宴の時代だったのか
そんな具合にふと思う…

泡というには あまりに鮮烈
夢というには あまりにリアル
美をも醜をもないまぜの中

花吹雪と金銀と 鋭い見えない
矢羽の飛び交う中を
放り出された若い日
マスカレードの大人たちが
美しいのか怖いのか…
それさえ分からなかった

手を引かれては
ぐるぐる踊り…
疲れたら 路傍に横たわる
路傍には 金のベッドが用意され
羽毛の掛布に 絹のシーツが
のべられて 
怪我しそうでしなかった…
運の良さにあきれてる

守られていたのか
危なかったのか
それさえ 定かでない時代
それでもまだ 穏やかなだったのだろう
時計の音は聞こえたもの…

愛など知らない小娘のわたしに
愛など囁く人もいて
わたしはそれが
とても怖くて
薔薇の花束と贈り物の弾を
海底を逃げ回る魚のように
掻い潜った記憶が確かにあった…

ただ ひたすら代償が
怖かった…

泡の時代は
夢かリアルか?
途方もない 渦の中

ブラックホールを抜けた向こうに
ホワイトホールがある心地した

同世代のあなたへ
覚えていますか

自分がしたこと…
煌びやかな夢のカーテンの隙間に
何かが潜んでいて
その正体を
少し垣間見たことを…

今の時代の若い素敵なあなたへ
あらゆるものをよくよく見つめて…

夢はいつか終わる…
でも だからと言ってあなたの夢を
信じることを諦めないで…

泡の弾ける瞬間は
それはそれは 寂しいのだから

ほんとうに 七色に輝くものは
弾け飛んだりしない…
きっと…