ーハレの日の魚鉢ー
翠の中 錆びたレールを走らせ
もはや使われなくなって
置き忘れられた
廃線路…
皐月からやがて
水張月へと向かう山へと走らせ
お弁当を積んで
水筒を積んで
残り少ない花を積んで
山へ山へ
廃線路を走らせよう
トロッコみたいな小さな電車を
水張月はハレの日もない
うな垂れた人たちを横目に見て
神々の住処に近い山へ山へ
途中雨に降られても
苦手な雷に打たれても
深い霧に包まれても
廃線路は導くだろう
行こうと思う想いに
満ち満ちた
ヨシノボリのように
飛び跳ねるように
這うように
逞しく…
川づたいに
山へ山へ
神々の魚鉢まで
ハレの日の魚鉢まで
遡上する魚の多くは
謎のまま
たれに呼ばわり
山を目指すや