ー幸子の手紙ー
差し障りない言葉の
意味をなさない枯草が
心を寒くさせるように
離れてゆく あなたの心は
まるで明けぬ冬のようだと
なんども反芻したのです
糸車を何度も回して
飽きてしまったようです
さよならと手紙に書いて
部屋の鍵を 郵便受けから
滑り込ませ…
この生活に ピリオドを打てば
わたしにやっと春がやって来るようで
他人の家の梅を見上げて
つくづく思う自分が嫌です
しあわせになりたいのは
だれも同じ…
だけどしあわせが
どんな形で どんなものかは
だれも知らないし
教えてくれない…
ぬるい湯冷めしそうな日々に
ぼんやり浸かっていることが
しあわせなのかもしれないと
無い頭で考えているけれど
今のままじゃあ…
今のままじゃあ…
もっともわたしがそう思うんだから
あなたもきっと気づいているんだろうと
思います
覚えていますか?
ずっと依然の春…
わたしたちがときめきながら
花を探しに出かけたことを
何を踏み外し
何に迷い込んだんでしょうね?
出逢ったことを あなたは
運命だと言ったのに…
あれはマヤカシだったのでしょうか?
春が見せた幻だったのでしょうか?
と 幸子の手紙には書いてあった
僕には止める術は無い…
すれ違ふ季節の如く交点を持ちて
ふたたびふたり去りゆく