幸子の手紙 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

鳴きウサギ|Nakiusagi
静かに鳴く小さな声のウサギ。
青薔薇の咲く場所で、和歌・童話・詩・願いを綴っています。
2009年より、呟きのように日々を記録。
noteでは「舞香亭幻想香炉」という物語の香りを、そっと灯しています。

https://note.com/nakiusagi44

ー幸子の手紙ー

差し障りない言葉の
意味をなさない枯草が
心を寒くさせるように
離れてゆく あなたの心は
まるで明けぬ冬のようだと
なんども反芻したのです

糸車を何度も回して
飽きてしまったようです
さよならと手紙に書いて
部屋の鍵を 郵便受けから
滑り込ませ…
この生活に ピリオドを打てば
わたしにやっと春がやって来るようで
他人の家の梅を見上げて
つくづく思う自分が嫌です

しあわせになりたいのは
だれも同じ…
だけどしあわせが
どんな形で どんなものかは
だれも知らないし
教えてくれない…

ぬるい湯冷めしそうな日々に
ぼんやり浸かっていることが
しあわせなのかもしれないと
無い頭で考えているけれど

今のままじゃあ…
今のままじゃあ…

もっともわたしがそう思うんだから
あなたもきっと気づいているんだろうと
思います
覚えていますか?
ずっと依然の春…
わたしたちがときめきながら
花を探しに出かけたことを
何を踏み外し
何に迷い込んだんでしょうね?

出逢ったことを あなたは
運命だと言ったのに…
あれはマヤカシだったのでしょうか?

春が見せた幻だったのでしょうか?

と  幸子の手紙には書いてあった
僕には止める術は無い…

すれ違ふ季節の如く交点を持ちて
ふたたびふたり去りゆく