夢の中で | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー夢の中でー

身を貫いてゆく悲しみは
寒すぎて感覚を失った指先に似て
悲しみが深くあればあるほど
もはやなんにも感じなくなるもの
 
愛しい人を見送る度に
遺される人になりたくはないと
何度も反芻するけれど
そこはそちらの勝手な思い込みだよと
昨夜の夢てあなたは笑う

逝く人はみな 幸せな顔をして
この世で起きたありとあらゆる思い出を
抱いて 丸裸で軽々と
飛ぶように 空の彼方

下を向いていた昨日までを
それこそ夢と思っていると
微笑む 微笑む

わたしにはそれが
ずいぶん憎らしく また羨ましく
そしてやはり  
果てしなく寂しくあるのに

だってそうでしょ?
同じあなたの同じ時代で
同じ心にはもはや二度と逢えない…

わたしは次に逢うとき
あなたと気づくことができるか
それさえ不安なのに…

あなたは信じろというのだから…

安らかな遺影の笑みに光差し
集約されし人の一生