かなしみ | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの


ーかなしみー

花の名前を 知らないとしても
美しいと感じる

寒い冬では 陽だまりが
ありがたいと思う

愛と知らなくても
なんとなく気になる人が
笑顔で居てくれると
喜んでしまう

なんとなく気になる人が
誰かを好きだと知った日は
重い気分になってしまう

教えられたこともない
習った筈もない 感情という
そんな小々波を わたしたちはいつ
覚えてきたのだろう?

自分には無い才能を
憧れながら 片隅で群雲のように
湧き上がる 黒い嫉妬の正体さえも
わたしたちは幾度も
もみ消して
賞賛と言う建前に変えてきたのだろう?

優しく生きていたいと
思いながらも 諸刃の剣
知らず知らずに 人も自分も
傷つき傷つけ 生きていながら
這いずる先に 爪に詰まった恨みの泥を
洗うことさえできないでいる

時おり 訪ねる奇跡のような
ああ 美しいね 綺麗だね
その瞬間を待ちながら

濁らずにそう思う瞬間の
純度の高い瞬間を
信じて 信じて 祈りのように…

愛とは 一片の穢れも無く
人も妬まず 羨ましがらず
嘘など微塵もあり得ない
透明で光輝く 清いものであります…

だからこそ
清流に魚住まず…
いいえ…住めないのでありましょう
ああしたい こうなりたいと
欲のある息をするものは…

愛とは
神の領域のようなのであります

穢れ多いわたしなどは
到底 至るに難しい高みにあると
言えます

だからこそ
憧れて止まない そんなものであります
しかも困ったことに 愛は
目に見えず 言葉で表すには
あまりにも 難解なのであります